直接的に相続税に関係しない内容もありますが、遺言や相続に関する法改正の話題がありますので、少し取り上げてみます。該当するかもしれないという方は、今後の動きに注目しておいてください。
デジタル遺言の推進
遺言はこれまで、民法の規定に沿ってかなり厳格に運用されてきました。相続税の現場でも、自筆証書遺言について認知機能などの問題があり、無効を争う訴訟が起こるケースもありました。
そうなると税務にも影響してくるわけですが、今後の方向性として、デジタル遺言を活用しようという話が出ているそうです。
また、押印についても不要にする流れがあるということで、この点は少し心配な部分ではあります。
ただ、どういった方向性になるにせよ、デジタルを取り入れていこうという流れ自体はあまり変わりがなさそうですので、その点は注視しておいた方がよいでしょう。
成年後見制度の改正
成年後見制度は、これまで法律で被後見人を守るという立場から、かなり強い権限が与えられている面がありました。フレキシブルな対応が難しい制度設計になっていたと思います。
それについて、方向性として少し緩和というか、今の時代に沿った対応をしていこうという流れになりそうです。
具体的には、「補助人」という制度を大きく範囲を広げる形で、途中で補助の内容を止めたり変更したりできるようにするということが検討されています。
こちらも今から具体的な内容を詰めていくと思いますが、遺言についても後見制度についても、民法の法制審議会というところで議論がされ、その内容がまとめられます。
これについてパブリックコメントということで、広く市民や国民の意見を聞く形をとり、その分を反映させた、もしくは参考にしたうえでさらにとりまとめて法律改正に進むという流れになっています。
ですので、いきなり変わるというわけではないのですが、方向性として遺言や後見制度について変更があるかもしれないということは、頭の片隅に置いておいた方がよいでしょう。
さらに新たな制度も始まった
少し前から相続登記の義務化が始まりました。これは、所有者が不明な不動産を減らしていきましょうという流れから、相続があった場合にその登記を相続人に義務化するという内容です。
これに伴って、また新たに別の制度が先日始まっています。
こちらは、亡くなった方の名義の不動産を登記の内容から検索して一覧を作るという内容になっています。
名寄せ帳とは少し違うようなのですが、亡くなった方の氏名や住所等から該当する不動産をピックアップするというのが制度の趣旨です。
これによって相続登記の漏れを防ぎましょうということが狙いになっていると思います。
たとえば活用の場面でいうと、居住していた市町村以外の市町村に不動産を以前持っていたという話を聞いたことがあるという場合には、活用の余地があると思います。
ただこれも、名寄せ帳を取得出来ればフォローできると思いますので、どちらがよいかは今後の運用次第かなということも思います。
ここ最近、相続税に関する直接的な改正の流れはあまり大きなものはなかったのですが、その周辺において、相続や遺言のあり方が議論されていった結果、さまざまな改正項目が増えてきています。
少し前には相続土地国庫帰属制度も始まりましたし、これについてもこれからどんどん活用の場面が増えてきて、実務対応もひょっとすると増えてくるかもしれません。
また、相続税そのものの改正としては、財産評価基本通達という相続税や贈与税を計算する際のルールの変更も今後見込まれています。(賃貸不動産に関するものについて)
劇的に変わるということはないのですが、必要な対策をしておきたいと考えている方は、少し注視して動きを確認しておきましょう。
まとめ
今回は、遺言や相続に関連する法改正の方向性について取り上げました。ポイントを整理すると以下のとおりです。
- デジタル遺言:遺言のデジタル化や押印不要化が検討されており、今後の動向に注目が必要です。
- 成年後見制度の見直し:補助人制度の拡充など、より柔軟な運用に向けた議論が進んでいます。法制審議会での議論を経てパブリックコメントを踏まえた改正になる見込みです。
- 相続登記の義務化と新制度:亡くなった方の不動産を登記情報から検索・一覧化する制度が新たに始まり、相続登記の漏れ防止が期待されています。
- その他の動き:相続土地国庫帰属制度の活用拡大や、財産評価基本通達の見直しも今後見込まれています。
相続税そのものの大きな改正はしばらくありませんが、周辺制度の変更が着実に進んでいます。必要な対策を考えている方は、引き続き動向をチェックしておくことをおすすめします。
