毎年年末ごろに相続税の税務調査の事例や件数、課税割合の報告、いわゆるレポートが国税庁からリリースされています。
その内容を見ているとやはり税務調査になる可能性のある処理というのはいくつかピックアップできます。
相続税の税務調査を避けたいという場合には、相続税申告の対応においてこういったことを検討しておきましょうということをお伝えしておきます。
名義預金の検討を十分に行っておく
名義財産というのは、当事務所ホームページでも何度かお伝えしていますが、亡くなった人の名義ではないけれど亡くなった人の資産だと認定される財産です。
特に預金についてはこの名義預金の有無で相続税の税務調査の可能性が大きく変わります。
今はマネーロンダリングの関係で口座開設をしたい人と窓口に来ている人が違う場合には、口座開設ができないケースが多いです。本人確認が厳格化されたとも言えるでしょう。
ただしこれは最近の話で、以前は結構気軽に家族のものであれば口座を作ることができました。
この口座を使って贈与したつもりになっている預金があると、相続の時に税務調査で指摘される可能性が高まります。
相続税の税務調査の事例を見ていても、名義預金とわかっていたのに申告していないということで、指摘を受けているケースがやはり目立ちます。
指摘財産の内容としても、預金が上位に上がってくる位ですので、名義預金じゃないかどうかの検討は十分にしておくのが安心です。
贈与したということが明らかにわかる場合には良いのですが、曖昧な場合はやはり細かく検討しておいた方が良いでしょう。
税務署は申告書が提出されてから亡くなった方と、その相続人や親族の預金口座の動きを把握することができます。銀行に照会をかけて移動履歴を見るということができるわけです。
銀行に照会をかけて預金の移動を見ていて資金の移動があると、やはり贈与なのか名義預金なのかということを確認したくなるというのが調査官の心情だと思います。
申告の段階でそういったことを細かく把握できていれば、これは名義預金と考えられるので相続財産として申告する、これは贈与として認識しているので申告しないという判断がしやすいです。
逆にこの辺を全くやっておらず、税務調査が来て名義預金を指摘されて慌てると、対応がかなり後手に回ります。
特に配偶者名義の預金には注意が必要
お子さんやお孫さんの預金口座も検討が必要ですが、特に配偶者に関しては注意をしてみておいた方が良いです。
例えば専業主婦で預金口座に5,000万円の残高があることを確認すると、相続税の税務調査を経験した税理士だと「名義預金の可能性がないか」というのはほぼ間違いなく頭の中に浮かぶと思います。
一般の方はその辺の認識が薄いケースもありますが、専業主婦で預金が5,000万円あるというのは通常だとなかなか考えづらいです。
ご本人が稼いできたものが少なく、年金もそれほど多くないというケースだと、その5,000万円の預金がどこから来たのか、どういった内容で形成されたのかというのは税務調査において指摘を受ける可能性が高いです。
これは金額が多い少ないではなく、5,000万円というのはあくまで例示であって、その人が働いていて年金もあり、ご自身の実家から相続したものがあれば5,000万円でも問題ないというケースはもちろんあるでしょう。
その配偶者名義の預金口座については、特にどこから来た財産でどういった内容で財産形成されたかというのは、ある程度相続税申告の際に把握しておくのが望ましいと思います。
現金を隠す行為はかなりリスキー
もう一つ、税務調査の事例で上がってくることが多いのは、預金から引き出した現金を自宅の金庫や床下に隠しているというケースです。
要は現金だと相続税がかからないという誤った認識をしているケースや、隠しても見つからないだろうという税務調査を侮った行為によって行われているケースがあります。
特に預金を引き出して現金として保管しているケースだと意図的ということが認定されるケースがかなり多いので、そうなると仮装隠蔽行為に該当して重加算税が課されるということが多々あります。
実際に相続税の税務調査の事例においても、現金を隠しているケースだと重加算税の対象になってしまうことが多いです。
重加算税の対象になると、本来収めるべき相続税にプラスしてペナルティー的な税金がかかり、それに加えて延滞税などもかかりますので、金額によっては相当に大きい相続税のペナルティーが発生するケースがあります。
税務調査は甘く見てはいけない
一般の方は相続税の税務調査を経験することがほとんどありませんので、税務調査について侮っている、軽く見ている傾向もあると思います。イメージしづらいということもあるでしょう。
年配の方だとマルサの女などの税金に関する映画で記憶があるかたもいますが、そうではない場合には事業者でもない限り税務調査の経験はほぼないです。
相続税の税務調査は、法人や所得税と違って一発勝負(法人などは5年後にもう一度調査があり得るが相続に関してはないという意味での一発勝負)というのが税務署の認識としてもあると思います。
税務調査に来られると、名義預金や現金を隠している疑いが濃厚だとかなり厳しい税務調査になることがあります。
名義預金だとまだ認識の違いということもあると思うのですが、現金を隠している場合には、意図的と認定されると、かなり厳しい処分になるケースもありますのでその点は注意です。
どこからそういった情報を把握するかというと、やはり生前の預金の動きであったり、生前の財産の形成要因や職業的内容からこれぐらいがあってしかるべきだろうという財産の内容をある程度把握してくるようです。
ようはアタリをつけてきているわけで、そういったところから外れている申告内容や金額を見ると税務調査で現金を探してみようという気持ちに調査官もなるように思います。
今後はAIによる税務調査先の選定が進んでくると言われていますので、やはり頭の片隅に置いておいた方が良いでしょう。
まとめ
相続税の税務調査を避けるためには、以下の2点について特に注意が必要です。
1. 名義預金の適切な検討と申告 家族名義の預金、特に配偶者名義の預金については、財産の出所や形成過程を明確にし、名義預金に該当するものは適切に申告しましょう。曖昧なまま放置すると、税務調査で指摘される可能性が高まります。
2. 現金を隠す行為は絶対に避ける 預金を引き出して現金で保管している場合、意図的な隠蔽と認定され重加算税の対象となる可能性が非常に高いです。
税務調査を念頭において申告の段階で十分な検討を行い、適切に対応することが重要です。
