中小企業やスモールな規模の法人だと、ひとり社長として経理や決算作業を行うケースがあると思います。決算の前に確認しておきたいことをいくつかお伝えしておきます。
決算整理に必要な事項
決算整理も色々と内容があるのですが、例えば棚卸しであれば社長の一存で棚卸し明細を作成するということはよくあるかと思います。
もちろんある程度の規模になれば仕入担当や経理の担当者が棚卸資産の内容を確認すると思いますが、社長が自分で棚卸しをするということはあると思います。
棚卸しのやり方も様々あるのですが、その辺は顧問税理士とよく相談をする上で、例えば棚卸しにおいてやっておきたいことの1つとしては、陳腐化していたり除却しているものがないかという確認です。
例えば商品を取り扱う会社で商品のトレンドがもうなくなってしまい全く売れなくなったものがあるとします。
こういったものは倉庫にある状態だと棚卸資産になってしまいますが、除却すると損金になりますので税金計算上は有利になります。
例えば食品の会社だと賞味期限切れのものがあったりすると、それは棚卸資産に含まれていると、お金が在庫に変わった状態と言えます。
もう販売することもできないし、除却廃棄する必要があるものについては、決算の前に廃棄処分をしておいた方が望ましいです。
特別損失などとして計上しておくとより適切な利益計算につながる可能性が高いです。
納税資金の準備
他には例えば社長がやっていることとしては納税があると思います。納税資金がどれぐらい必要かというのは決算の前にある程度打ち合わせしておいた方が良いでしょう。
特に利益に対して課税される法人税については利益ベースで計算しやすいのですが、抜けがちなのは消費税の納税です。
多くの会社では消費税と本体取引価格を合算して取り扱っているケースが多いので、消費税の納税分を別で取っておくということをしていないケースがあります。
資金繰り上はそれでも問題ないかもしれませんが、消費税の納税は会社が赤字でも発生する可能性が高いため、消費税の納税についてはより注意が必要です。
可能であれば毎月これぐらいの納税になっているという金額の目安が月次決算をしていればわかるはずですので、消費税の納税分を置いておくというのも必要な対策のひとつです。
もし万が一資金繰り的に消費税の納税がきつそうということであれば、例えば借り入れの準備をしたり、急なことで難しいということであれば、分割納付の相談を税務署と行うということも必要になってくるでしょう。
国税の中で滞納が多いのは消費税と言われています。消費税について納税資金を確保できるように資金繰りをチェックしておくことはお勧めの1つですので、ぜひトライしてみてください。
決算前の対策
納税資金対策や節税として、棚卸しの除却、廃棄処分などは決算の前にやっておいた方が良いです。決算後だと、例えば棚卸しの除却だと否認されてしまう可能性ももちろんあるので、適切なタイミングでそれを行っておくというのがやはり大事なことです。
顧問税理士がいる場合には、できることがないか確認をしてみることをお勧めしています。もちろんできることはすべてやっている可能性はあります。
特に利益が出ている会社だと、入金サイトよりも支払いサイトの方が短い場合には資金繰りを圧迫しがちです。そこに納税資金が加わってくるわけですので、より注意が必要だと私は考えています。
決算賞与の検討
会社が絶好調で決算前に利益がたくさん出ていることがわかっているということであれば、決算賞与も選択肢の1つです。決算の前に金額を確定して全従業員に通知しておくことで、翌期に支払っても損金計上できます。
ただ要件が少し厳しい部分があるので、可能であればその決算月の末日に支給しておくのがやはり望ましいと考えています。
決算をまたいだ場合に処理があやふやだと否認されかねませんので、その辺は十分に顧問税理士と打ち合わせをしておく方が良いでしょう。
従業員にしっかり還元するというのも、経営者として従業員に長く勤めてもらえる条件の1つになってきています。どこにお金を使うかというのは改めて考えていただく方が良いでしょう。
まとめ
ひとり社長として決算を迎える際は、以下の点を事前に確認しておくことが大切です。
まず棚卸資産については、陳腐化した商品や賞味期限切れの在庫など、廃棄すべきものを決算前に処分しておくことで、適切な損金計上と節税につながります。
次に納税資金の準備、特に消費税の納税については十分な注意が必要です。会社が赤字でも発生する可能性がある消費税は、事前に納税分を確保しておかないと資金繰りを圧迫しかねません。毎月の納税額の目安を把握し、必要に応じて借入れや分割納付の準備も検討しましょう。
また、利益が出ている場合には決算賞与も有効な選択肢です。従業員への還元は節税だけでなく、長期的な雇用の安定にもつながります。
これらの対策は決算後では効果が薄れたり否認されるリスクもあるため、決算前の適切なタイミングで顧問税理士とよく相談しながら進めることをお勧めします。
