ここ数年、土地の値段が値上がりしていることや株価が好調なこともあり、相続税申告が必要な方の割合も増えている印象です。
実際、国税庁から発表されている資料でも、およそ全国で10%近くの方が相続税申告が必要な状況という数字が出ています。
また、遺言についても件数が増えており、相続税申告が必要でなおかつ遺言を残そうと考えている方には、ぜひ税務のポイントを押さえて検討してもらうのも選択肢になりますので、少し書いてみます。
遺言があると良いこと
相続税申告において、遺言があるということだけで優遇される事はないのですが、財産を分けるときにやはり揉め事が少ないというのはポイントとして大きいと思います。
相続税申告がある場合でも、揉めていても揉めていなくても申告期限は待ってくれませんので、仮に遺産分割ができていない状況でも、申告期限までに未分割の状態、いわゆる法定相続分で分けたとした場合の税金計算をして納税をすることになります。
この場合、未分割だと各種用意されている特例が適用できませんので、一旦納める税額としては多くなる見込みです。その後、遺産分割がまとまれば特例を適用して申告のし直しをして更正の請求を受けるということも可能ですが、やはり手間に感じるものです。時間もかかります。
そのため揉めそうという場合には、遺言を用意しておくというのがセオリーになっているのですが、相続税申告においてより意味を持つこととしては、誰がどの財産を相続するかで相続税が変わってくるというところです。
財産の分け方が決まっていることで受けられるメリット
財産を分けるということで、遺産分割協議、もしくは遺言で決まるわけですが、遺産分割協議の場合は遺言がないので、相続税申告までに分割協議をして誰がどの財産を相続するか、亡くなった後に決めることができます。
つまり、亡くなったときの状況をある程度加味して相続税を検討できるという意味合いでもあるのですが、遺言の場合は亡くなった後に財産の分割を決めるわけではありません。亡くなる前に財産の分け方を決めているわけですので、相続税申告は遺言の内容に拘束されると言っても過言ではありません。
もちろん遺言も後で撤回したり、相続人の方が全員で遺言をなかったことにするという行為は可能ではあるのですが、それが絶対できるかというと、誰か1人でも反対すると難しくなります。
自分に不利のないように変更されると思えば承諾しなければ良いわけですので、それに期待するのはリスクがあると言えるでしょう。
むしろそういうリスクを避けるために遺言を残しているともいえます。なので、遺言を書いた時点で相続税の申告の仕方がある程度決まってくるといえます。
特に不動産に関しては各種特例が用意されているので、その特例を適用した方が良いのかどうか、遺言作成時点である程度踏み込んだ検討になるかもしれませんが、小規模宅地等の特例などを適用できるかどうかで、税金の金額は大きく変わります。
このため、遺言を検討するときには、相続財産や相続税への影響をある程度考慮して遺言を検討していただくのもお勧めです。
またその過程で、遺言を残すにしても、納税資金が手当てされていることのメリットは大きいので、遺言を用意するとともに、生命保険等で納税資金を手当てしておくというのも、相続人の方には喜ばれます。
ある程度税務的なポイントを検討しておいた方が、遺言の効力はより高まるように思いますし、後でこんなはずではなかったということにならないように、相続税申告が必要な方の場合は、遺言を用意する際に税務的なチェックを受けておいた方が望ましいでしょう。
まとめ
相続税申告が必要になる方が増えている昨今、遺言を検討される際には税務面への配慮が欠かせません。
遺言があれば揉め事を避けられるだけでなく、特例の適用などを事前に計画することで、相続人の税負担を大きく軽減できる可能性があります。特に小規模宅地等の特例など、誰がどの財産を相続するかで税額が変わる制度については、遺言作成時に十分な検討が必要です。
また、納税資金の手当てとして生命保険の活用も併せて検討することで、より安心できる相続対策となります。遺言を作成される際には、ぜひ税理士などの専門家に相談し、税務面のチェックを受けられることをお勧めいたします。