漫画家、同人作家の方からご質問をいただく内容で多いのが「経費として認められるのはどういうものか」という内容です。前提を忘れないように判断していく、ご自身で線引きをするのが良いのですが、具体的にどういうものが該当するか検討してみます。
「その事業に必要なもの」という前提
これは法人・個人を問わず、どのような事業でも、その規模にかかわりなく、すべての事業においての前提です。
その事業を行うにあたって必要な支出が経費といえます。例えば仕入れがあるビジネスであれば仕入れも経費になりますし、給与やその他事業を運営するにあたっての必要な支出はほかにもあるでしょう。
それぞれの事業で何が経費として該当するかは、事業の内容や性質によって異なります。
車の購入費用やガソリン代は運送業であれば当然経費になりうると考えられますが、これが漫画家の場合はどうでしょうか。作家業を行うにあたってどこまでその車が必要だったかどうかは、事業主にとって説明が求められる大事な内容になってきます。その車の車種についても同様です。高級外車であればあるほど、その事業においてポルシェである必要性が求められるのは、どの事業においても同じです。
その事業に特有の経費というものもあるでしょうし、逆に交際費など少し範囲があいまいに見えるものも実際にはあります。
例えば個人事業主の交際費は、その金額の上限は法人と異なり設けられていませんが、税務調査で問題になった際には以下のような内容の説明が求められます(質問票といった形で回答を求められることがあります)。
- 店の種類
- 同席又は贈答した相手方氏名・名称
- 接待交際の相手方の所属連絡先
- 接待交際の相手方との関係
- 接待交際の趣旨・目的
- 予約者の氏名
- 日程・場所・相手方の決定方法
- 支払方法
- あなたが支払った額
- 接待等の結果受注できた業務
このような内容が説明できないと、交際費として認められない可能性がどんどん高まるということです。
ある支出が経費として認められるためには、業務と合理的な関連性があり、なおかつ業務遂行上の必要性があるものとされていますので、改めてご自身の経費の内容をこの前提に立って確認しておいたほうがよいでしょう。
作画資料の経費の範囲
漫画家、同人作家の方に特有の経費で「作画資料」というものがあります。要は絵や漫画などを作成するために必要だった資料というべきもので、「資料費」などとして計上していることも多いです。
この作画資料の経費の範囲として、どういうものが考えられるでしょうか。
前段の交際費について求められる説明内容と対比すると、少なくとも以下のような部分は説明できるようにしておきたいところです。
資料費として計上した内容のうち「どの部分が作品制作において反映されたか」という部分はポイントが高いです。例えば実際に購入した作画資料が作品の中に出てきている場合には、その作品を提示すれば一目瞭然なわけですので分かりやすいです。
一方で、例えば「アイディアやストーリーなどの元になった」という説明だと、実際には経費として認められるかは微妙なラインになってきます。
作品と全く関係がないように見えて、なおかつプライベートでの利用部分が大きいのであれば、そもそも経費ではないのではないかという見方をされることは、頭の片隅に置いておいたほうがよいでしょう。
そういったものが多く計上されている場合の税務調査では、調査官は比較的厳しい視点で、ほかの経費も含めてチェックをしてくることが考えられます。
まとめ
漫画家・同人作家にとって、作画資料の経費計上はその範囲については慎重な判断が必要です。
経費として認められるためには「事業との合理的な関連性」と「業務遂行上の必要性」が不可欠であり、特に作画資料については、実際の作品制作にどのように反映されたかを明確に説明できることが重要なポイントとなります。
日頃から購入した資料と作品との関連性を記録し、税務調査の際には具体的な説明ができるよう準備しておくことをお勧めいたします。