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相続時精算課税贈与を亡くなった後に選択するタイミング

相続時精算課税贈与を亡くなった後に選択するタイミング

相続時精算課税贈与とは、相続の際にその贈与を計算上足し戻して精算する贈与制度です。この相続時精算課税贈与の選択をするタイミングの一つとして、贈与者が亡くなった後に選択することの効果等についてお伝えします。

目次

相続時精算課税贈与の死亡後選択とは

相続時精算課税贈与は、原則として贈与税の申告の際に選択して届出することで適用を受けることができる贈与制度です。そのため、贈与があった時にその翌年において贈与税の申告期間中に選択することになるというのが基本的な対応となります。

また、贈与した人がその贈与した年の途中に亡くなった場合においては、その年分の贈与税の申告は不要となります(相続税の申告の際に生前贈与加算で加算計算がされるため)。つまり、亡くなった後にその贈与年分の贈与税の申告はしないというのが基本になります。

事例での整理

令和7年9月18日に200万円の贈与をした場合、贈与税の申告は令和8年2月1日から3月15日までの間に行います。ただし、令和7年10月15日に贈与した人が亡くなったとすると、贈与税の申告義務はなくなるので贈与税の申告は不要です。

ここで相続時精算課税贈与を選択できるかどうかですが、相続時精算課税贈与を選択することができます。事例で言うと、贈与税の申告期間である令和8年2月1日から3月15日までの間に相続時精算課税贈与選択届出のみ行うことになります。

贈与税の申告は不要なのに届出だけして選択するメリットがあるかどうかですが、相続時精算課税贈与の税制改正によりメリットが発生することになりました。

その効果について

税制改正前の取扱い

税制改正前は、相続時精算課税贈与を選択した後の贈与財産については、相続の際にすべて足し戻して計算する(つまり精算する)ことになっていました。贈与税が課税されているかどうかにかかわらずです。

相続時精算課税贈与は計算上の非課税枠が2,500万円ありますので、そこに至るまでは贈与税が課税されません。贈与された財産の総額が2,500万円を超えると、その超えた部分について20%の贈与税が課税されます。

相続時精算課税贈与により贈与税を納付している場合には、相続時にその贈与税も控除して相続税を計算することができます。この部分については税制改正後も変わりません。

税制改正による変更点

一つ大きく変わったのが、2,500万円とは別に基礎控除が設定されたことです。これは暦年贈与における110万円の基礎控除と同じ金額です。

この相続時精算課税贈与による110万円の基礎控除部分は、相続時に足し戻ししなくてよい贈与財産になります。これにより、相続時精算課税贈与を亡くなった後に選択することで、基礎控除の部分が有利になるという状況が発生することになりました。

具体的な効果

事例で言うと、税制改正がない状態だと贈与された200万円は相続税の計算上、全額が足し戻しの対象でした。しかし、相続時精算課税贈与の選択をすることで110万円の基礎控除ができますので、足し戻し金額は90万円ということになります。

  • 贈与があったが何もしていない場合:足し戻しの対象金額は200万円
  • 相続時精算課税贈与を選択した場合:足し戻しの対象金額は90万円

110万円の差ではありますが、相続税の課税税率が10%の方でも11万円の相続税額の差が生じます。有利に計算できることになりますので、亡くなった年に贈与をしていて精算課税贈与を選択していない場合には、届出をしておくことを検討したほうがよいでしょう。

まとめ

相続時精算課税贈与の税制改正により、贈与者の死亡後でも選択届出を行うことで110万円の基礎控除の適用を受けることができるようになりました。この制度を活用することで、相続税の計算上有利な取扱いを受けることが可能です。

特に、贈与者が贈与した年に亡くなった場合には、相続税申告がある場合には贈与税の申告は不要となりますが、相続時精算課税贈与選択届出のみを提出することで基礎控除の恩恵を受けることができます。相続税の負担軽減効果を考慮すると、該当するケースでは積極的に検討すべき選択肢と言えるでしょう。

ただし、個々の事案によって適用の可否や効果は異なりますので、具体的な検討を行う際には税理士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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