まだタイミングじゃないな、という方はぜひ毎月末の事務所通信メルマガ(無料)の登録をこちらから!

揉めている親族関係の相続税申告のリスク

揉めている親族関係の相続税申告のリスク

相続人同士で揉め事に発展してしまったというケースを見かけることがあります。揉めている場合の相続税申告への影響を整理しておきます。

目次

相続税申告への影響

相続税申告は相続人が共同して申告できる、ということはご存じの方も多いですが、必ずしもそうではないケースもあります。

法律上は相続人がそれぞれで申告でき、特例的に相続人が共同して申告をすることが認められている、という流れです。

つまり、揉めているからといって一緒に申告をする必要はなく、相続人がそれぞれで申告をすることが可能です。

相続人AとBがいて、Aは税理士甲に依頼して申告を行い、Bは税理士乙に依頼して申告をする。

この状態は揉めている相続においては見かけることがありますし、実際私も税理士甲または乙の立場で申告を担当したことがあります。

この状態で問題になるのは、税理士甲、乙で作成した相続税申告の内容に相違がある場合です。

亡くなった方がおひとりなので相続税申告書の内容は一致してしかるべきですが、相続人がそれぞれで申告書を作成すると相違している状態の申告書が2通提出されるということが起こり得ます。

これだけだと問題には見えないかもしれませんが、税務署としては「どっちが正しい内容なのか」を明らかにする必要がでてくるため、相続税申告の税務調査の可能性がかなり高まると言われています。

税理士甲と乙で事前に申告内容のすり合わせができている場合もありますが、そうではないケースのほうが大半かと考えられるため、税務調査のリスクが上がるというわけです。

この点を考慮して、相続人AとBから税理士甲が一括して受任して共同して申告をするということも可能ではあります。

弁護士と異なり、税理士として相続人AとBから申告の依頼を受けることは利益相反等にはあたらないとされています。

相続税の税務調査が来た時に事実認定として財産評価や財産の内容について修正することになれば、親族間で行われている調停や裁判にも影響することがあります。

調停や裁判は税務調査よりも後のタイミングになる、相当に時間を要することが多く、税務の現場では相続税の税務調査は申告書提出から1~2年経過後くらいまでが最も多いとされているので、税務調査のほうが先行するケースがあるわけです。

遺言があっても揉めることがある

遺言がないケースのほうが揉めやすい状態ではあります。

遺言がないと遺産分割協議といって、相続人全員で誰が何をいくら相続するのか、ということをまとめる必要があります。

その協議でまとまった内容に基づいて遺産を実際に分けていくので、そこがまとまらないと遺産は簡単に言うと塩漬けの状態になります。

そのため揉めそうな親族関係なら遺言を準備しておいたほうがよい、と専門家はお伝えするわけですが、遺言があっても揉めるケースは実際のところはあります。

例えば遺言を遺したひとがご高齢のときに自筆遺言を作成していた場合は、その遺言作成時の認知機能について問題になることがあります。

ようは遺言を作成するに足るような認知能力がなかったので遺言の内容は無効だ、という主張をするケースです。

また公正証書遺言であっても同じことは可能性としてはあり得ます。

自筆遺言よりも公正証書遺言は関わる人も多く、公証人からのお墨付きがある状態ですが、認知機能に問題が絶対にない、というわけではないのが難しいところです。

ただ係争になったときに公正証書遺言と自筆遺言だとどちらが問題になりやすいかは自筆遺言のほうが問題になりやすいといえます。

遺言がある状態でも揉めてしまった場合においても相続税申告はその揉めている状態を考慮せずに期限設定があり、延長もされません。

その場合にどのような対応になるかですが、遺言の無効訴訟などは相当に時間を要することになりますので、当初の申告は遺言の内容に沿って申告をするか、遺言がないものとして未分割で申告をすることになります。

税理士甲は遺言に基づいて申告をしていて、税理士乙は未分割で申告をしているとかなり高い確率で税務調査になる可能性があるため、事前に申告の方法についてはすり合わせをしておくことが望ましいです。

実務においては、ひとまずは遺言に基づいて申告をして、判決が確定した時点で申告のやり直しなどを検討することが多い印象です。

まとめ

相続人間で争いが生じた場合でも、相続税申告は期限内に行う必要があります。相続人はそれぞれ個別に申告することが可能ですが、異なる税理士が作成した申告書の内容に相違がある場合、税務調査のリスクが高まります。

遺言がある場合でも認知機能の問題等で有効性が争われることがあり、その場合は遺言に基づく申告か未分割申告かの選択が必要です。実務上は、まず遺言に基づいて申告し、判決確定後に必要に応じて修正申告等を行うケースが多く見られます。

争いがある相続では、税理士間での申告内容のすり合わせが重要であり、一人の税理士が複数の相続人から受任することで税務調査リスクを軽減することも可能です。税務調査の結果は調停や裁判にも影響を与える可能性があるため、慎重な対応が求められます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

目次