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申告スケジュールがタイトな相続税申告のリスクと対策

申告スケジュールがタイトな相続税申告のリスクと対策

「相続税の申告はうちには関係ない」と思っていたものの、相続税申告のお尋ねが届いたり、改めて財産を洗い出してみたところ「ひょっとして申告が必要?」と慌ててご相談に来られるケースは少なくありません。

税務相談の現場でもしばしばありますが、「申告までのスケジュールがタイト」な相続税申告の場合には、特に留意したいことやリスクがありますので、整理してお伝えします。

目次

相続税申告で最も重要な留意点

相続税申告において最も重要な留意点は、スケジュールがタイトであってもなくても、**「財産を漏れなく把握して計上すること」**です。

これは「言うは易く行うは難し」の典型例でもあり、相続税申告で最も注意したいポイントとして挙げられます。

相続人の方にとって「これは相続財産ではないだろう」と思われるものでも、実際には相続財産に該当するケースが多々あります。名義預金などは税務調査で問題になることが多いのですが、相続人の方の認識と税務上の取り扱いが異なるということが往々にしてあります。

保険なども同様ですが、把握しきれていないものが出てくる可能性は、スケジュールがタイトな場合により高くなる傾向があります。

最近は金融機関の手続きにも時間を要するケースが多く、残高証明書を取得するのに2週間ほどかかることもよくあります。証券会社の場合などは1か月を要したというケースも散見されるため、そもそも相続財産の把握に時間がかかるということになりがちです。

残高証明書がないと申告できないというわけではありませんが、相続人の方が認識していない財産がある可能性もあり、可能な限り金融機関で残高証明書を取得することを推奨しています。

今とは異なり、一昔前には同じ金融機関の異なる支店でも比較的簡単に口座を作れる時代がありました。ご本人名義に限らず、親族名義の預金口座でさえも気軽に作れたのです。これが名義預金を生む温床になっているのは、税務の現場では半ば当たり前の認識となっています。

相続税申告の税務調査においても「財産の計上漏れがないか」ということを中心に確認されることを考えると、スケジュールがタイトであるがゆえに把握しきれないかもしれない、ということは十分にリスクとなります。

スケジュールがタイトなときの対応策

それを踏まえたうえで、スケジュールがタイトな場合にできることを整理しておきましょう。

残高証明書の取得に時間を要する場合 通帳などで可能な限り把握をする

不動産の所有状況に不明な点がある場合 市区町村役場で名寄帳を取得する

保険の加入状況が不明な場合 通帳からの保険料支払いの確認や保険証券での問い合わせをする

遺産分割協議ができていない場合 3年以内の分割見込書を添付して当初の申告をする

これらのことは検討しておきたい重要なポイントです。

特に遺産分割協議(遺言がない場合に誰が何を相続するかを決める話し合い)がまとまっていないケースも、スケジュールがタイトな場合には多くあります。

遺産分割協議をする場合には財産目録が必要になりますが、その財産目録が揃っていないことによる弊害の一つと言えます。

この場合でも「相続税申告期限は待ってくれない、延長できない」ので、当初の申告を期限内に行い、納税がある場合には納税することになります。

そのため、まずは期限内に申告できることを目指したほうがよく、分割未確定でも「3年以内に分割確定する見込み」の届出書を添付して申告をします。

これにより、遺産分割が確定して申告のやり直しをする際に、遺産分割が確定していることで適用できる相続税計算上の特例(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例)を適用することができます。

もめている場合だけではなく、遺産分割が申告期限に間に合わない場合も分割見込書を提出することは可能です。

いわゆる未分割の場合には特例が適用できないため納税金額は増えることになりますが、申告のやり直しの際には更正の請求という還付の申告をすることができます。

資金的なことも含めて確認しておくことが望ましいです。(未分割の場合でスケジュールがタイトな場合は、相続人の方の財産から納税をすることになることが多いです)

まとめ

スケジュールがタイトな相続税申告では、以下の点に特に注意が必要です。

主なリスク

  • 財産の把握不足による計上漏れ
  • 名義預金など認識しづらい相続財産の見落とし
  • 金融機関手続きの遅延による資料不足
  • 遺産分割協議の未了による特例適用不可

対応策のポイント

  • 通帳や名寄帳の活用による早期の財産把握
  • 分割見込書の提出による期限内申告の実現
  • 未分割申告後の更正の請求による特例適用

相続税申告は期限が厳格で延長ができないため、スケジュールがタイトな場合でも適切な対応策を講じることで、リスクを最小限に抑えながら適正な申告を行うことが重要です。

不安がある場合は、早めに税理士にご相談いただくことをお勧めします。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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