今はちょうど税務調査が始まる時期となります。税務署の事務年度(いわゆる事業年度)が6月末で一区切りとなり、異動辞令があり新たな体制で稼働するからです。
今の時期から11月ぐらいまでが税務調査のピークの時期と言えます。その税務調査のときには各種項目がチェックされるわけです。
経費についての税務調査における指摘事項について整理しておきます。
経費かどうかの判断
まず一番最初に確認されるのは経費関係だと「この支出は経費ですか?」という確認です。
経費に該当するかどうかは業務関連性と経済的合理性などが考慮されますが少し難しい言葉ですので解きほぐしてみます。
支出の業務関連性とは
例えば、あなたがパン屋をしているとします。このパン屋を運営していくために各種の支出があり経費があります。
小麦粉などを仕入れる必要がありますし、パンを焼くためにオーブンも必要でしょう。
販売員の方を雇う場合には人件費がかかり、テナントを借りているのであれば賃料も発生します。
いわばパンを売ることで得られる売上のために必要な支出が経費、と言えます。
ここに例えば事業と関係があるかどうかよくわからない支出が紛れ込んでいるとします。業務にどのように関連しているかよくわからないと経費ですか?という疑念を持たれるわけです。
業務関連性とはその事業を営む上で必要な支出かどうか、売上を得るために必要かどうか、その視点で支出をみる、と捉えておきましょう。
これはモノを買うときやサービス提供を受けるときにビジネスにおいても大事な視点です。
これを買ったらどう売上につながるかな、事業を維持管理するために必要かな、そう考えることはビジネスにおいて無駄な支出を減らすことにつながります。
結果的に良い体質のいわゆる筋肉質な引き締まった財務内容に近づける、ともいえます。
経費の経済的合理性とは
続いて経費の経済的合理性を確認してみます。
前述のパン屋にご登場いただくことにします。パン屋さんですが店舗で販売しているのと同時に、食パンをホテルや喫茶店に卸しているとしましょう。
実際こういうふうに自分の店だけではなく販売先に配達をしているというパン屋はあります。
このとき、パン屋の店主であるあなたは配達をする必要がでてきます。毎日ていねいに店で焼き上げたパンをホテルや喫茶店に配達していくわけです。
ここで配達に要する車が必要だということは想像しやすいです。
パン屋のあなたは車を準備するわけですがバンタイプの配送用車両だと配達に使っているんだとわかりやすいかなと。
そうではなく、フェラーリでパンを配達しているとするとどうでしょうか。
配達するという業務そのものはフェラーリでも達成できますが、フェラーリである必要性があるか。
もっと言うとパンを配達するにあたってフェラーリという高級外車である合理性があるかどうか。簡単に言うと配達業務に適した車両かどうか。
税務調査において調査官はこのような視点でも経費を見てきます。
経費かどうか説明をするのは誰か
税務調査についてよく言われるのは指摘事項について証明する(立証責任などと表現されます)のは調査官、税務署側だという内容です。
確かに調査官側で例えばフェラーリがそのパンの配送に必要なものかどうかをチェックしていくわけですが、その過程で質問はされます。
どこにどの頻度で配送しているのか、普段の配達以外で業務に使用しているのか、プライベートの使用はないか。
走行距離メーターや配達先、頻度などから実際にフェラーリの使用を確認していくわけです。
そうして確認した内容を最終的にはこれで間違いがないかという点も含めて改めて説明を求められるケースは往々にしてあります。
調査官の質問や判断に対抗できるような証拠や説明ができる状況というのは間違いなくプラスに働きます。
フェラーリでもポルシェでもこういう業務に必要だから、という説明ができることはマイナスにはなりません。
そのため、経費として計上する項目については納税者のかたが前段の業務関連性や経済的合理性をいかに説明できるかはポイントになります。
税理士は記帳代行を受けていたとしてもその事業にフェラーリが必要かどうかは真には分からない部分も実際には多いです。
まとめ
経費について業務関連性や経済的合理性をパン屋を例にしてお伝えしてみました。
税理士側として税務調査において指摘されそうな事項があれば当然、納税者・依頼者の方に説明を求めることはよくあります。
逆に税理士に説明ができない、ということであれば税務調査においても経費じゃないのでは?と言われる可能性は高まると言えるでしょう。
ご自身の事業に必要な支出かどうか、改めて考えるきっかけにしていただけるとよりよい地魚運営につながっていきますので、この記事で触れた内容をもとに経費を見直してみてください。