相続税申告そのものがはじめて、というかたも多いですし遺産分割協議ももちろん初めてという方が多数です。
相続税申告と納税、遺産分割のタイミングについて整理しておきます。
相続税申告と遺産分割
相続税申告の計算上、大きな特徴として相続財産をだれがいくら相続したかで計算の内容が変わるということがあります。
また、誰がどれくらい相続したか、というのは遺言がない場合には遺産分割協議という相続人間の合意により決めるプロセスを取ります。
さらに相続税の計算上は各種の相続税を計算するうえで有利に計算できる特例が用意されているのですが、この特例は「遺産分割が確定していること」を要件としています。
そのため、相続税申告がある場合には特に「遺産分割ができていること」が大きな意味合いを持ち、相続税の計算にも影響が大きいです。
相続において揉め事がないという場合には、なるべく相続税申告期限までに遺産分割ができていることが望ましく、手続き上もそれをお勧めしています。
揉め事があり遺産分割がまとまらない場合には相続税の計算上で不利になるだけではなく、実際の名義を引き継いだり解約する遺産分割の手続きそのものができないことになります。
遺産分割できないと簡単に言うと遺産は塩漬けの状態で処分できません。
ですので遺産から納税をするのは実質的には難しくなると考えておいた方がよいです。
相続税の納税は金銭一時納付といって、申告期限までに一括で現金納付が原則になっています。
遺産に納税に足る現預金がある場合には遺産からの納税も選択肢になりますが、これも基本は遺産分割出来ていることが必要です。
現預金以外の財産を換価・売却して納税資金を作る場合には名義変更や売却までの時間をスケジュールに織り込む必要がありますので、遺産分割協議の成立はもっと早い段階を想定しておくべきです。
相続税の納税には延納(分割納付であり利息部分がかかる)または物納(遺産そのもので納税)がありますが、いずれも申告期限までに遺産分割できていることと、申請をして審査を受ける必要がありますのでこちらもスケジュールはかなりタイトですのでもし選択肢に入れる場合には注意しましょう。
状況により変わる適切なタイミング
状況により遺産分割のタイミングは変わりますが流れとしては、遺産の整理、目録を作成する→遺産分割協議を行う→協議書に署名押印というプロセスを取るのがよいです。
財産の中身が分からないと分けられませんので、亡くなった方が遺した財産を整理して確認していく必要があります。
相続税申告があり、揉め事がなくスムーズに進む場合だと申告期限の2カ月ほどまえに遺産分割が成立している状態がよいでしょうと私はお客様にはお伝えしています。
そこからであれば、仮に遺産から納税をしようと考えた場合でも金融機関の手続きに1カ月ほどかかることを見越してもスケジュール的には大丈夫なことが多いです。
有価証券や投資信託を売却して納税に充てる場合には、銀行などの金融機関よりも相続手続きに時間を要しますのでもう少し時間的な余裕があったほうがよいでしょう。
不動産を売却して納税資金に充てるのはかなりリスクが伴います。
というのも不動産はどのタイミングで売れるか、いくらで売れるか読みづらいケースが多く、場合によっては譲渡所得税が多額にかかる可能性もでててきます。
相続財産から納税をする予定がないという場合でも申告期限の一カ月ほど前には分割協議が成立していることが申告の準備を考えると望ましいです。
やはりぎりぎりになってしまうと思わぬ形で分割協議が整わなかったときに影響が大きくなります。
納税がないことが見込まれる場合でも遅くとも申告期限の2週間前には分割協議を整えておきたいところです。
まとめ
相続手続き(名義変更や解約)に意外と時間がかかる、というのはやはりあまり知られていないことが多いです。
そこからさらに納税までに換価・売却が必要なのであればよりスケジュールはタイトになります。
相続税申告と納税がある場合には特に遺産分割のタイミングと納税をどこから(遺産なのか相続人の財産からなのか)を意識したスケジュールを組んでおくのがおすすめです。