相続税がかかるかどうかの判断をする際に国税庁の申告要否判定コーナーを利用されている方がいらっしゃいます。ご相談の際にその資料をご持参いただくのですが利用上の注意点がありますのでお伝えしておきます。
申告要否判定コーナーとは
相続税の申告が必要かどうかを判断することは普段から相続税のことを勉強していたり身近でなければ難しいことも多いです。
所得税の確定申告は毎年自分でやっている方も多いですが、所得税と相続税は税目の違い以上に申告の内容が全く異なります。
そのため、国税庁からリリースされている申告要否判定コーナーを利用して申告が必要かどうかを判断することも有効です。
そのうえでご自身で申告対応されるのか、税理士に依頼するのかは検討するのがよいでしょう。
なので流れとしては、申告が必要な財産の内容かどうか→申告が必要そう→税理士に依頼するかどうか、というフローをとることがおすすめです。
申告要否判定コーナーの入力そのものは簡便です。
亡くなった方の相続人と相続財産を入力していくと申告が必要そうかどうかを判定してくれます。
そのうえで申告要否判定コーナーを利用する際の注意点をいくつかピックアップしておきます。
利用の際の注意点
利用の際の注意点として3つお伝えしておきます。
1.申告書が作れるわけではない
このシステムで申告書が作れると考えている方がときどきいらっしゃいますが、申告書そのものを作れるわけではありません。
あくまで申告が必要かどうかを判定するのみです。
また実際の相続税の計算上、土地の価額などは財産評価基本通達というルールに基づいて計算をすることが基本です。(違う場合ももちろんありますがあくまでここでは基本に則ります)
この財産評価についても細かくこの判定コーナーでできるわけではなく、イメージとしてはざっくりと亡くなった方の名義の土地の面積に路線価を乗じて計算することでひとまずは良いでしょう。
2.特例適用の要否までは判断できない
相続税の計算上、税額に大きく影響を及ぼす特例が2つあります。ひとつは配偶者の税額軽減ともうひとつは土地についての小規模宅地等の特例です。
この2つの特例を仮に適用できたとしても申告をすることが要件であるため、申告は必要になります。
財産規模と基礎控除の金額によっては相続税申告は必要だけれど相続税はゼロ円というケースもあります。
また、この特例についてはそれぞれ適用できる要件が細かく設定されています。(税額への影響が大きいため)
それらを個別に判断するわけではなくあくまで「特例が適用出来たらこうなります」という試算ですので、実際の申告の際には要件を満たしておらず申告時に特例適用ができないことがありますのでその点は注意しておきましょう。
3.税額控除関係まではフォローされない
相続税申告が必要かどうかをあくまで簡便に判定するだけのシステムですので税額計算そのものもできますがその後工程についてはフォローされていません。
たとえば相続税の計算ができたときに、税額控除といって贈与税額の控除や障害者控除などが適用できるケースがあります。
申告上は適用できるけれども申告要否の判定では適用されずに税額計算が行われますので実際の相続税の計算結果とは異なることがあります。
特に障害者控除や未成年者控除は税額への影響が大きく、適用後の税額がゼロ円になる場合には申告不要となりますので注意が必要です。
結果的に申告が不要になるかもしれませんが、財産評価などを細かく適切に行って始めてそこに到達するため、申告書作成の最初の段階や面談時においては税額がゼロ円になって申告不要となるかはきわどいケースもあります。
まとめ
相続税の申告要否判定コーナーについて注意点なども含めてお伝えしました。
申告が必要となる場合には各種特例の適用などについて遺産分割されていることが要件のことが多く、また申告期限というスケジュールも発生します。
49日法要明けぐらいから動き始めていただくのが遅くもなく早くもなくというタイミングかと考えますので、落ち着いたら申告要否から確認していきましょう。