相続税申告において気を付けたいことのひとつが「相続財産に漏れがないようにする」ことです。
いかに遺漏なく相続財産を把握できるかが相続税申告の内容をより確かにできるかのカギなわけですが、言うは易く行うは難しというのも実際のところ多いです。
生命保険については把握する制度が開始しており、預金口座についても照会制度がスタートしますので概要を整理しておきます。
預金口座管理制度とは
預金口座の管理はご本人や親族の方がやっているケースがありますが、家を探しても通帳やキャッシュカードが見つからない、どこの金融機関に口座があるか分からないというケースはあります。
お子さんが遠く離れて住んでいて長い期間が経過していたりすると預金口座の把握が困難なケースが実際のところ相続税申告の際にも見聞きします。
以前はこうした場合には亡くなった方の生活圏内にある金融機関に口座の有無などを照会をかけるほかありませんでした。
いわばローラー作戦とも言うべき方法しか取れず、計上漏れが出てくる可能性もあったわけです。
そうしたことを減らそうということで預金口座管理制度が始まりました。
相続人(包括受遺者を含む)のかたが預金保険機構に対して亡くなった方の名義の預金口座の有無を照会することができる制度です。
注意点と必要な対策
正式には預貯金口座付番制度と呼ばれるものになります。注意点などもありますので以下お伝えしておきます。
まず付番ですのでマイナンバーの登録が必要ですがこちらは任意の制度になっています。
マイナンバーの提供が必要になることと、生前に手続きが必要ということも注意点です。
亡くなった後にこの制度で付番、つまり預金口座とマイナンバーを紐づけることはできませんので生前の対策が重要です。
相続対策で財産の漏れがないようにしようと考えるときには生前の手続きをしておきましょう。
手続きの場所については口座をお持ちの金融機関にて申し出るか、マイナポータルでの手続きも可能です。マイナポータルでの手続きの場合は対応しているスマートフォン等が必要です。
公金受取口座とは手続きが異なりますので、公金受取口座の指定をしていても付番制度が自動的に適用されるわけではなく別で手続きをしてください。
付番制度の登録が完了すると預金保険機構に加入している金融機関に保有しているその方の預金口座の紐づけが完了します。
そのため、お亡くなりになったあとに相続時照会を申し込むことでそのマイナンバーに紐づけされている預金口座の把握ができます。
ただし、残高証明書等を取得できるわけではなくあくまで口座の存否を確認するだけですので相続税申告や遺産分割協議などの際には各金融機関において指定の手続きが必要です。
また付番制度は原則として一度登録するとあとで登録を解除することはできません。
亡くなった際だけではなく災害時にも付番制度を利用して預金口座の存否が確認できます。
まとめ
相続時や災害時には預金口座の把握ができることはとても有用です。相続税申告においても「財産の漏れをいかに少なく、なくすようにできるか」が適切な申告内容につながります。
転勤が多かったりして転地先で預金口座を作成しているケースや、ペイオフ対策で金融機関の複数にわたり口座を保有していて把握が困難なケースなどでは積極的に付番制度を活用してもよいでしょう。