上場株式が相続財産に含まれている場合にはその株式そのものとは別に配当についても取り扱い上の注意点があります。
配当がある上場株式の相続の注意点について整理しておきます。
配当が相続財産になるかどうか
上場株式の場合、配当が定期的にあるケースが多いです。会社の業績が順調であればあるほど株主還元で配当が出る傾向があります。
そのため、上場株式を所有している方が亡くなった場合には株式そのものの相続もですが、配当が相続財産になるかどうかは注意しておいたほうがよいです。
配当が相続財産になるかどうかの判断ポイントは配当の基準日(=決算日)、配当の決議日(=株主総会決議日)と亡くなった日の前後関係が重要になってきます。
仮に3月決算法人の上場株式の配当について整理しておきます。
仮に5月末にお亡くなりになって、実際に配当が6月になってから支払いがあったとするとどうでしょうか。
決算日は3月31日、株主総会決議日は6月10日、実際の配当の支給日が6月30日とすると、5月に亡くなった時には配当を受け取る権利を有した状態ですので、配当期待権という配当を受け取る権利として相続財産を計上します。
上記のケースで亡くなった日が6月15日の場合には、総会決議日と配当支給日の間に亡くなっていることになるため、未収配当金として相続財産に計上します。
配当期待権も未収配当金も評価方法は同じで、配当金-源泉徴収税額と計算します。
もし亡くなった方の通帳が口座停止の前であれば振り込まれている配当金で金額確認すると確かです。
配当受け取りが振込ではない場合には通知を確認するか、上場会社は決算の際に必ず決算短信をリリースしていますのでそちらで確認をすることになります。
決算日前に亡くなっている場合には亡くなった後に配当を受け取ったとしても相続財産を構成しません。
単純に未受領の状態の配当金についてはその株式を所有していたひとの収入ですので、未受領配当金として相続財産に計上します。
準確定申告で計上するかどうか
亡くなった方の財産に配当金が含まれる場合には準確定申告も検討しておきましょう。
高齢の方の場合、収入は年金収入のみというケースが多いです。
この場合は普段は合計所得金額が増えることなどから配当金については確定申告をしていないケースも多く見受けられます。
特定口座での資産運用の場合には配当金から自動的に源泉徴収税が控除されていますので、確定申告をする前に課税がなされている状態です。
そのため必ず確定申告をしなければいけない、というわけではありませんので、配当金を確定申告していないことに問題はありません。
ただお亡くなりになった後の確定申告である準確定申告については、その後の後期高齢者の保険料や住民税のことを考慮する必要がないと言えます。
この場合には配当金を確定申告で計上して、配当控除を受け、年始から亡くなるまでの年金(準確定申告用の源泉徴収票で確認)と合わせて申告をすることで配当から控除されている源泉徴収税額の還付を受けられることも選択肢として検討してみてください。
実際に配当金を計上して申告するかどうかは計算してみると有利不利が判定しやすいので有利選択するために判定してみることをおすすめします。
ちなみに準確定申告は確定申告書等作成コーナーでは作成できませんので手書きもしくは申告ソフト等での対応になります。
まとめ
上場株式の配当に関する相続の注意点についてお伝えしました。計上漏れがないように、また端数株式などの論点もありますので、長く株式を保有していて状況がよくわからない場合には、証券会社のみではなく証券代行部に残高照会をかけることなども検討していただくのがよいです。