相続税申告には各種の税額控除項目が設定されています。そのうちの1つが相次相続控除という10年以内に2回相続が発生した場合に、1回目の相続で相続税を納めている場合には2回目の相続でその相続税の分を控除しましょうという制度です。
同じ財産に2度相続税がかかるということを避けるための措置でもあります。相次相続控除適用のための申告書の確認や注意点について整理しておきます。
過去の申告書の確認
例えば5年前の相続で相続税申告書を提出して相続税を納めた方がいらっしゃるとします。この方が亡くなられた場合に相次相続控除を検討することになります。
要は前に相続した財産にかかる相続税を2回目の相続のときには考慮しましょうという制度ですので、前回の相続税の申告内容、申告書を確認する必要が出てきます。
1回目の相続で相続税が500万円(申告書第一表の納付すべき税額)、1回目の相続で2回目に亡くなった方が相続した相続財産が5,000万円(申告書第一表の純資産価額)、2回目の相続財産の合計が1億円(申告書第一表の純資産価額の合計額)、1回目の相続から2回目の相続の期間が5年だとします。
以下のような計算が相次相続控除の金額計算です。
500万円×(1億円/(5,000万円-500万円)※)×((10年-5年)/5年)=250万円
※100/100を超えるときは100/100とする(1回目での相続財産よりも2回目の相続財産合計のほうが多い状態)
計算された250万円が2回目の相続税申告書における相次相続控除額の合計額です。この金額を2回目の相続の相続人の財産取得割合で按分して控除金額を分けます。
亡くなられた方のご家族が相続税申告書を保管しておられれば問題ないのですが、見当たらないというケースもあります。
保管しておられたら、その相続税申告書をベースに相次相続控除の明細の必要事項を記入していくことになります。
もし保管がない場合でその1回目の申告の時が10年以内であれば税務署で閲覧申請をして申告書を確認するという流れです。
相続相続控除や障害者控除などは税務署からアナウンスがあるわけではありませんので、こちらで必ず確認をする必要があります。
閲覧申請
税務署に閲覧申請をする際には、今回亡くなった方の相続人の委任状が必要です。すべての相続人の委任状が必要ですので、注意が必要です。
委任状と必要書類が揃ったら1回目の相続税申告書を提出した税務署に閲覧申請をしたい旨をまず連絡しておく方が良いです。
というのも例えば5年であれば税務署に残っている可能性もあるのですが、これが7年前8年前ギリギリ10年前などになってくると相続税申告書を税務署で保管していないケースも多いとのことでした。
事前に連絡をして税務署に保管があるか、行ってすぐに閲覧できるかどうかというのは確認しておいた方が結果的に手間を考えるとそのほうがよいでしょう。
私も先日久しぶりに閲覧申請をしてきたのですが、やはり事前に税務署の担当に連絡をして申告書類の保管状況を確認しました。
その時は税務署に保管がなかったので国税局の保管場所から取り寄せをする必要があるということで、閲覧申請書を出した後1週間~2週間ほど時間が必要と言われました。
相続税申告の場合には紙で提出しているケースが今でも多いですし、電子化になったのは最近ですので、実務上は紙の申告書の閲覧申請をすることになります。
初回の相続税申告の納税金額が大きければ、結構な金額の相次相続控除の金額になりますので、申告したかもという場合には念のため閲覧申請をかけておいた方が安心です。
相次相続控除の注意点
相次相続控除の注意点についても整理しておきます。
初回の相続税申告書で相続人ではないケースがあります。遺言で財産を取得していた相続人以外の立場(受遺者といいます)での相続の場合には相続相続控除の対象になりません。
この点は注意が必要ですので確認しておきましょう。
また延滞税や加算税等は対象外で2割加算の部分は本税に加算されているわけですので、この部分は対象となります。
必要なのは納める相続税が1回目の相続税申告であった、ということです。
例えば1回目の相続で配偶者が相続している場合には多くのケースで配偶者の税額軽減の特例を適用して納付すべき相続税額はゼロになっています。
その配偶者が亡くなった2回目の相続では1回目の相続税申告では納税はなかったので相次相続控除の対象にはなりません。
2次相続を検討する際にはこの辺りの話を混同しているケースもありますので改めて整理しておきましょう。
親族関係で相次相続控除が想定されるのは、2回目の相続で亡くなったかたが1回目の相続で相続人になっていて相続税を支払っている関係図です。
両親が亡くなって1回目、2回目の相続となった場合には触れたように相次相続控除の対象にならないことが圧倒的に多いです。
1回目の相続で子の立場で相続し、その子が亡くなるケースだと相続税の納税があった可能性は高いので相次相続控除適用の有無を確認しておきましょう。
ほかによく見かける相次相続控除の適用がある親族関係としては、1回目の相続で兄弟姉妹として相続した場合です。
この場合はいわば相続財産が水平に移動(子や孫が相続人だと縦の関係)している状態ですので、その兄弟姉妹との世代が近いと2回目の相続が10年以内に起こる可能性は比較的あり得ます。
まとめ
控除項目は特に税額にダイレクトに影響します。相次相続控除の適用に気が付かれていないケースもみかけますので、適用漏れがないように確認をしておきましょう。
申告書が見当たらなければ閲覧申請も視野に申告内容の確認が必要です。