一次相続が未分割の状態で二次相続が起きることあります。その際の税務上の注意点について整理しておきます。
一次相続と二次相続の関係
一次相続で仮にお母さんが亡くなった場合に、そのお母さんの財産の分け方が決まらないうちに二次相続でお父さんが亡くなった、というケースはありえます。
ご両親の年代が近い場合にはこういったことが起こる可能性はあり、一次相続(お母さん)の財産が未分割の状態です。
お母さんが亡くなったときにはお父さんは存命なので、相続する権利を有しているといえます。
仮に子が2人の場合には、お母さんの財産をお父さん、子2人の相続人3名で分ける必要があります。それができないうちにお父さんが亡くなると、お父さんの財産としてはお母さんの財産を相続する権利があるため、相続税申告がある場合に税務に影響してきます。
お母さんの遺産分割に参加できるのはお父さんは亡くなっているので子2人です。すんなりまとまればよいですが揉めている場合にはお父さんのみならずお母さんの遺産分割にも時間を要することが考えられます。
もし仮にお母さんの財産の分け方が決まらない状態でお父さんの相続税申告期限を迎えそうという場合には税務上の注意点があります。
基本的な流れとしては一次相続の遺産分割をして、二次相続の遺産分割をするというのがオーソドックスな流れですのでそこはおさえておきましょう。
税務上の注意点
お母さんの財産の分け方が決まらない場合、前段の事例だとお父さんの法定相続分は2分の1です。
この財産を受け取る権利を相続財産として計上してお父さんの相続税申告を作成することになります。
お父さんの申告後にお母さんの遺産分割がまとまったときにはどうすればよいか。
このときにはお父さんの相続した財産が変わっていることがあり、その際には申告のし直しをすることになります。
揉め事がない家族関係の場合にはお父さんのお母さんの財産の相続分はなかったという遺産分割をすることが多いため、その場合にはお父さんの財産を減らす形で更正の請求という申告のやり直しを選択することになります。
お母さんもお父さんも相続税申告が必要な状態だけれど未分割の状態で申告をする必要がある場合には各種特例が受けられないことが注意点です。
というのも相続税申告で影響が大きい「配偶者の税額軽減の特例」と「小規模宅地等の特例」は財産の分け方が決まっていることが適用の要件になっています。
未分割の状態だとこれらの特例が受けられないので納税額が一時的に増える可能性が高いです。
分け方が決まらない状態での申告には「3年以内の分割見込書」を添付して相続税申告をしておきます。
これにより分け方が決まった時には特例を適用して申告のし直しができるので忘れないようにしましょう。
揉め事がなく、一次相続と二次相続の相続人が同じようなケースだと比較的まとまりやすいですし合意を得やすいというの実際のところあります。
親族関係がよくなく、子のないご夫婦の場合だと相続人が妻側と夫側で異なることが想定されますので遺言を残しておくことなども念頭に揉めない相続の対策がより必要になります。
うちは揉め事がない、とおっしゃるケースでも、両親のいずれかがご存命だからこそ間を取り持ってくれて絶妙なバランス関係のケースというのは現場でお話を聞いているとやはりよくあるものです。
揉めると裁判や調停にかかる時間、弁護士に依頼する費用、相続税申告で特例が受けられないことによる相続税の増大、そして一番は精神的な負担が長期間にわたり続いてしまいます。
親族間の折り合いが悪く、普段からコミュニケーションが取れていないようなケースだとか揉め事のある相続になる可能性が高くはなるでしょうから、事前にその点を踏まえた対策も検討しておくのが望ましいです。
まとめ
一次相続が未分割の状態だと二次相続の遺産分割や相続税申告にも影響します。また子だけが相続人の状態だと普段から折り合いが悪い場合には相続がまとまらないケースも見かけます。
一次相続も二次相続も遺産分割が必要であること、申告が必要な場合には申告書のやり直しも念頭において対応することなどを注意して進めていきましょう。