生前に遺言を準備しておられる場合で遺産がカバーしきれていないケースがあります。そういうときの税務的な対応を整理しておきます。
遺言で遺産がカバーされていない状況とは
遺言をご自身で作成されるケースは自筆遺言が多いですが、金融機関のサポートで遺言を作成している場合でも抜け漏れがあるケースはあります。
自筆遺言の場合だと、具体的な明示がなく、現金やその他財産が漏れているケースはよく見かける内容です。
預金や不動産、金融資産は意識が向きやすいと言えば向きやすいです。
具体的に引継ぎの手続きがあるため、書いておかないと、と考えるかたが多いようです。
現金やその他財産についてはその亡くなった時点でいくらかわかりづらいのと、一部で記載しなくてもよいだろうと考える人もいると聞きます。
亡くなる前に預金から引き出しておけば相続税がかからないという都市伝説のような話です。
相続税の現場ではそのようなことはなく、亡くなる直前に引き出していて使っていない場合には手元現金として計上しますし、何かモノになっている場合にはそのモノについて相続財産としての計上を検討します。
あとときどき見かけるのが借地権の記載漏れです。
例えば土地を借りてその上に建物を建てている場合には見た目上は建物だけが相続財産に見えます。
権利は目に見えないもので、地代を払って土地を借りているのであれば借地権が存在することになります。
このあたりは金融機関サポートの遺言でも漏れていることが実際わたしの経験上ありました。
ややこしいのは、建物は相続する人の指定があり、借地権もその人が相続する内容だとよいのですが、具体的記載がなく遺産分割協議が必要だったり、その他財産は別の相続人にという内容だと揉めている場合は特にややこしいです。
そのほかに借入金や貸付金も手元にその財産が見えないケースがありますので、遺言を作る際には改めて専門家のサポートを受けたほうが良いと言えるでしょう。
特に相続税が課税されるような遺産の規模の場合には、相続税申告にも影響を及ぼしますのでなおさら注意が必要です。
税務的な対応
では、遺言があり遺産がカバーされていない場合にはどうすればよいでしょうか。
遺言の内容からカバーできると判断できるのであればよいのですが、そうではなく漏れていると一部未分割の状態になってしまいます。
相続税計算上は分けられていることで適用できる特例が多くあるため、一部未分割状態だと特例適用に影響を及ぼしかねません。
つまり全部分けれている状態を目指したほうがよく、カバーできていない場合にはそれをするための対応をします。
遺言を書き直す、ということが生前で可能なのであれば書き直しがまずシンプルかつ適当でしょう。
すでにお亡くなりになっている場合には、遺言の内容と異なる分け方をする、カバーできていないものについては遺産分割協議が必要です。
遺産分割協議は相続人しか参加できませんのでその点は注意してください。遺言で財産を相続できた人(相続人以外の受遺者)が相続したほうが良いものが漏れている場合には贈与なども検討することになります。
相続税申告書には遺言や遺産分割協議書の写しを添付することで分けれていることを示しますので、書類を添付することは忘れないようにしてください。
遺産分割協議のやり直しは法律上は可能ですが、税務上は贈与とされますのでその点には留意していただくのと、相続財産ではないものを分けるとこれも贈与とみなされます。
まとめ
遺言ですべての遺産がカバーされていることが最も問題がない状態と言えます。その他財産は〇〇にという記載があるケースも多いです。
自筆で遺言を作成する場合は権利の財産がないか、抜け漏れがないかは改めて確認しておくことが望ましいです。