令和6年から相続時精算課税贈与の制度が改正されて使いやすさが増したとされています。
基礎控除として110万円が新たに創設され、相続財産への足し戻しも不要となったのは影響としては大きいです。ある程度リスク管理しておきたいところですので、その辺をお伝えしておきます。
相続時精算課税贈与のリスク
相続時精算課税贈与は、その名前の通り相続時に精算をする贈与です。相続のときにその贈与については相続財産に足し戻して相続税を計算します。
また一度選択すると撤回できないという大きなデメリットがあり、届け出を出して選択して、以後はその贈与者からの贈与について相続時精算課税贈与を使い続けなければいけないルールがあります。
一方で、贈与者の方が亡くなる前に贈与していて、贈与税の申告を提出する前に亡くなっている場合などは、後で相続時精算課税贈与を使うことができますので、その場合は有利に働きます。
リスクとしてもう一つ大きいのは相続時まで贈与を管理する手間がかかることです。
いつ誰から誰に相続時精算課税贈与を行ったかを把握しきれないと相続税の申告時に間違えることになります。
相続時精算課税贈与は相続時に精算する前提があるため、相続税の申告を作成する際に、すべての相続時精算課税贈与を把握する必要があるためです。
贈与してから10年20年が経っていても必ず戻すことになりますので、その管理の手間がかかるのがリスクです。
現場の感覚で言うと、相続時精算課税贈与に限らず、贈与があったかどうかを覚えていない人は結構な割合でいらっしゃいます。
贈与があったか、いくらでいつか覚えておられますかとお伺いしても覚えていなかったり、契約書がなかったり、通帳も昔のものであればなくなっていたりすることがあります。
過去の贈与きちんと管理して把握しておくことは簡単に思えるかもしれませんが、意外とできない方もです。そのため、相続時精算課税贈与を使う場合には別である程度管理をしておいた方が望ましいです。
相続時精算課税贈与の管理
一番良いのは、相続時精算課税贈与による選択届出があった場合には、その選択届出書を元にそれ以降の贈与を全て整理して、1つのフォルダや電子データとして残しておくことです。
それは受け取った方、受贈者の方がやっておくべきことかなと私は考えています。
というのも贈与した人は、亡くなった後話をすることはできませんので受け取った方=相続人に話を聞くことになります。
相続の時に相続税申告書を作り提出し、納税するのは相続人であり、受贈者であるその子や孫であるからです。
なので、相続時精算課税贈与を選択する場合には、相続の時に必ず必要なので管理しておく手間を惜しまないようにしてください。
過去に提出した相続税申告書や相続時精算課税贈与の贈与税申告書などは税務署で閲覧申請したり請求をすることもできます。
ただし、手間と時間がかかるのでできればそういった閲覧申請をせずとも確認できるようにしておきたいところです。
まとめ
以前から相続税申告の際には3年以内の贈与や相続時精算課税贈与の確認をするようにはしていますが、忘れてしまっているケースもあります。
精算課税贈与は相続税申告に反映するのを忘れて申告してしまうと早いタイミングで修正の案内があり、そのときに足し戻しを忘れていることに気が付きます。
精算課税贈与の足し忘れが今後は増える可能性が高いので、事前に管理しておきたいところです。