法人税の計算上、役員報酬の取り扱いは厳格です。自分の会社で自分宛てに役員報酬を出すのだからいくらでも調整して法人税を少なくできてしまう、というのが考え方のひとつです。
そのため一定の要件を満たしていないと法人税の計算上は経費になりません。法人が行った支出に関して役員報酬と税務調査で認定されるとダメージが大きいので注意が必要です。
役員報酬は税務調査でよく指摘される
法人が支払った金額が経費ではなく役員報酬と認定されるとどういうダメージがあるかまず整理しておきます。
法人が経費のつもりで支払っていたけれど税務調査で役員報酬として認定された場合には複数の税目にわたって影響が出てきます。
法人税の計算上は一定要件を満たしていない役員報酬となるため、損金不算入=法人税計算上の経費ならないという取り扱いです。
定期同額給与や事前確定届出給与に該当しないためこの取り扱いになってしまいます。
支出100万円が役員報酬認定されると、法人税計算上は100万円は経費ではなく利益に足し戻して税金計算します(法人税申告書での別表調整の一つで加算調整と言います)。
お金は法人から出ていくけど税金計算上はなかったものとして税金計算するので法人税は増えます。
続いて所得税計算上は源泉徴収していませんので源泉所得税の処理が法人側で必要になります。
徴収すべき源泉所得税を徴収して納付していないため加算税の対象となります。
さらに役員個人の所得税・住民税も役員報酬として取り扱われてしまうため、いずれの税金も増えます。
税務調査で役員報酬関係や役員に関する支出がチェックされるのは、仮にある支出が役員報酬と認定できるとトリプルパンチ(法人税増、源泉所得税増、役員個人の税金増)が想定できるからです。
税務調査官の視点にたつと一石三鳥なわけです。
さらに隠ぺい仮装行為が認められると重加算税の対象となってしまいます。税務調査では特に役員絡みの支出がチェックされるのはそういう理由からです。
プライベートのもの、事業に関係ないもの
税務調査では役員絡みの支出についてプライベートのものがないかは重点的に見られます。
交際費や経済的利益がよくチェックされる印象です。
あとは事業に関係なさそうな支出についても同様に中身を確認されることが多いです。
これらが経費ではないとなったときには役員報酬(役員賞与)として税務調査で否認されることが想定されます。
あとは最近はまた復活してきたのが海外視察関係です。
海外との取引がある場合に現地を視察することもあるかと思います。またコロナ禍が落ち着きを見せて海外視察も以前のように増えてきていることも影響しているでしょう。
そのため海外視察関係や基本的に税務調査では重点的にチェックされます。
役員個人、プライベートの海外旅行と認定されてしまうことはやはり避けたいので、海外視察が多い場合などは特に出張日程、日報などは細かくつけておいたほうがよいです。
仕事と関係ないところに行っている割合が高いとどうしてもプライベートに見えてしまうものです。
事前にフォローできる部分はきちんとやっておくに越したことはないです。
まとめ
役員報酬がらみが税務調査で指摘事項に入りやすいのは法人税への影響だけではないということが一因になっています。一石二鳥どころか一石三鳥ですので。
思わぬところで経済的利益だったり役員賞与と認定されないようにより注意して支給や議事録、取引価格などの確認をしておきましょう。