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遺留分侵害額請求の税務上の注意点

遺留分侵害額請求の税務上の注意点

弁護士の方からのご相談で、相続関係の話があると思わぬところで課税される可能性があることを知っていただくことが多いです。今回は遺留分侵害額請求の際の税務上の注意点をお伝えします。

目次

遺留分減殺から侵害額請求に変わった

民法改正により以前の遺留分減殺請求から侵害額請求に変わりました。一見すると遺留分を請求するんだから何も変わらないと見えますがモノで弁済するか金銭で弁済するか、大きな変更があります。

侵害額請求になったので金銭による弁済がベースですから、税務上はお金のやり取りで済めばその金銭のやり取りそのものに課税はされません。

ところがこれが侵害額請求に変わったところの大きな注意点で、金銭での弁済が必要なところを不動産等で弁済すると話が変わってきます。

税務上はモノで遺留分侵害額請求に対する弁済を行うと譲渡したとみなすという取り扱いになっているのです。

これは減殺請求のときと税務上の取り扱いとしてはかなり大きな違いで、以前の認識のままだと課税対象になると気が付かない可能性もあります。

国税庁のホームページでも取り扱いについて記載があります。

遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて土地を移転した場合の課税関係

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/01/05.htm

質疑応答事例

甲は、遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて、所有している土地を乙に移転しています。これは代物弁済に該当しますので、甲に対して譲渡所得課税を行うことになります。

この際の譲渡対価は所得税基本通達33-1の6に規定があります。

所得税基本通達33-1の6

民法第1046条第1項《遺留分侵害額の請求》の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産(当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求の基因となった遺贈又は贈与により取得したものを含む。)の移転があったときは、その履行をした者は、原則として、その履行があった時においてその履行により消滅した債務の額に相当する価額により当該資産を譲渡したこととなる。

つまり消滅した債務(遺留分侵害額の金額)で譲渡したとすると。

相手方、代物弁済により不動産を取得した側の取得費については所得税基本通達38-7の2に規定があり、消滅した債権の金額により取得したとみなされます。

不動産を売却処理したと取り扱いになりますので、侵害額請求されて代物弁済をした、不動産を手放した側は通常通りの譲渡所得税の計算を行います。

譲渡した不動産が相続により取得したものであれば取得価額を引き継いでいますので、高額な譲渡所得税の課税の可能性もあるため事前に税務面のチェックは必要です。

和解等をする前に課税関係を確認しておく

遺留分の侵害額請求があった時に限らず相手方と係争があり、不動産のやり取りがある場合には課税関係をチェックしておくことが大事です。

例えば共有物分割請求の際にも交換の場合は一定要件を満たせば交換特例により課税がないケースもあれば、金銭での代償となるとこれもまた譲渡所得税課税の可能性が高いです。

不動産が動くときは基本的に譲渡、贈与、交換など課税関係が発生することが大半ですし、相続の場合でも相続税が課税対象となることもあります。

一度和解して登記してしまうと後でやり直しというのは相手方との合意が得られない可能性もあるためなおさら注意が必要です。

登記原因にもよりますが不動産移転のコストは相続という不可抗力による移転を除いて高額になりがちです。

譲渡所得税(所得税、住民税)、贈与税、登記費用や不動産取得税、場合によっては確定申告の費用、国民健康保険料や自己負担割合などへの影響も考慮しつつ、どのような形で合意すれば税務面でどのようになるかはあらかじめ把握しておいたほうが望ましいです。

まとめ

譲渡所得税については税務署側は不動産の登記情報を確認して所有者の移転があればお尋ねを毎年発送しています。

これが届いてからひょっとして申告納税の必要がある?と思わぬところで課税されているケースも相当数ある可能性もあるため不動産の移転が伴う裁判や調停がある場合には事前に課税関係を確認しておくほうが安全です。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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