法人成りや事前確定届出給与などを検討する場合にはファクトに基づいて判断することをオススメしています。
何となくやると後戻りできなかったり思ったより効果が出なかったりするものです。ファクトに基づいて判断するとはどういうことかお伝えします。
法人成りを例に考えてみる
法人成りを例にファクトに基づいて判断するというのを考えてみましょう。
税理士から法人成りを提案されたり、周りの人から見聞きして法人成りをしようかなと考える個人事業主の方は多いです。
ある程度の所得があるケースが多いですがそれでも自分にとって法人成りが良い選択かどうかを判断しづらい面もあるでしょう。
そういうときにはひとつずつ法人成りしたらどう変わるのか、ファクトを確認するのがよいです。
この場合のファクトは数字で、ということになります。
法人成りは以前は消費税の免税事業者の期間が2年取れることがメリットとしてあげられていました。いまはどうかというとインボイス登録すると強制的に課税事業者になりますので法人にしてもいきなり消費税の課税事業者というケースはあり得ます。
個人事業主でインボイス登録をしている場合には法人成りしても引き続きインボイス登録をすることが予想されますので消費税のメリットは2割特例の申告ができる期間ぐらいになるでしょう。
その消費税の納税見込みをまずは確認してみましょう。
続いて法人成りすると基本的に役員報酬を取ることになると考えられます。この場合には社会保険料が発生するわけですが役員報酬から引かれる分と会社から納める分があります。
役員報酬の明細上は手取りから引かれているだけに見えますがほぼ同額が会社から上乗せして支払われていますので、その分も考慮しておきたいところです。
そう考えると社会保険料は役員報酬の設定金額にもよりますがかなりの金額になります。
所得税や法人税が下がったとしても社会保険料を考慮すると結局そんなに変わらないケースも試算しているとよく見ます。
税金だけではなく社会保険料として発生する部分も法人成りの際には確認しておかないと思ったより手取りが増えない、みたいなことが発生しがちです。
法人成りを勧められたのであればこの辺りの試算をまずはやってから数字面での有利不利を確認してみましょう。
そもそも数字面で有利な部分がないのであれば法人成りする理由が減ることになりますし、ほかに法人にすることで得られるであろうメリットがないか確認していくことになります。
ファクトを判断材料のひとつにする
事前確定届出給与を使った社会保険料削減スキームや年金復活プランというのを社会保険労務士やFPが勧めているのを見かけますがこれについても有利不利のラインがあるので確認しておくのが望ましいです。
事前確定届出給与も事務処理などをきちんとできていない会社が導入するのはかなりリスクが高いですしそれに見合った効果がでるのか見込めるのかは確認しましょう。
勢いが大事という面もビジネスにはあるのですが、ファクトを確認しないまま進めてしまうと後戻りができないことはたくさんあります。
思わぬ損をする可能性もあるわけです。
特に法人成りに関しては以前のようなメリットが薄くなってきていて個人事業主のままではだめなのか?という視点がすっぽり抜けているケースは見かけます。
わたしのところに来る相談で言うと漫画家・同人作家のかたから顧問税理士から法人成りを勧められたがどうしたらよいか判断がつかないとか、法人成りしてしまったけどやめたいとかそういうご相談は定期的にあります。
お伺いすると何となく規模的に法人成りを勧められているだけだったりするので、有利不利やメリット・デメリットを確認したうえでご自身で判断することがよいです。
判断材料としてファクト(数字)を用いることを勧めているのは客観的に見やすいからです。
勧められるがままによく検討せずに重要な経営判断をしないようにファクトを判断材料のひとつにすることを意識してみてください。
まとめ
法人成りしたほうがいいか、また法人にしたけどやめたいというご相談は最近特に多くいただきますが、漫画家・同人作家のかただと社会保険料対策ができる面があるので有利不利でいうとそれなりに大きな所得金額をキープできないと法人成りしても有利になりません。
雰囲気だけ規模だけで判断するのはリスクがありますし法人をやめたいというご相談もあることを考えるとより慎重に判断したほうがよいです。