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法人版事業承継税制の気をつけたい勘違い

法人版事業承継税制の気をつけたい勘違い

法人版の事業承継税制も特例適用ができると利用のしやすさが認知されてきたのか見かける機会も徐々に増えています。ただ勘違いもあるようですので注意喚起も含めてお伝えします。

目次

法人版事業承継税制の簡単なまとめ

事業承継税制は中小企業の株式の贈与または相続による課税に対して適用できる制度です。

非上場の中小企業で業績が好調だったり業歴が長くて会社資産が潤沢にあったりすると株式の評価額が高くなるため、中小企業の事業承継のネックになり得ます。

そのため事業承継を円滑にしましょう、という主旨の制度として設立されました。少し前までは一般措置のみでしたが特例措置ができて適用するハードルが下がり、見かける機会も徐々に増えています。

中小企業の株式を贈与または相続により承継した場合の贈与税・相続税に対する制度で、場合によってはその税額だけで数百万円~数千万円になることもあり、適用できると株式にかかる税金でメリットがあります。

メリットはあるのですが本来納めるべき税金にたいして優遇されるものですので要件は厳しく設定されているのですが、その部分をすっかり忘れてしまっているケースもときどき見かけます。

都合の良い部分だけ見ないようにはしておきたいところです。

気をつけたい勘違い

気を付けておきたい勘違いとして3つ取り上げます。

いきなり税金が免除される

承継税制が適用できた場合にいきなり税金が免除されると考えている人がいますが段階があり、最終的に要件を満たした時に免除(つまり納税しなくてよくなる)となります。

最初のうちはあくまでも猶予(納税を待ってもらっている)の状態に過ぎません。

贈与で株式を取得した場合には贈与された後継者は贈与税がまず猶予されます。その後、先代経営者が亡くなった場合に贈与税の猶予から免除に切り替わって贈与税を納める必要がなくなるという段階を踏みます。

ただしこの場合は贈与税は免除されますが、そのあとの先代経営者の相続税について猶予の状態に切り替わります。

その相続税がいつ免除になるかというと、後継者が亡くなったときもしくは事業承継で新たな後継者に贈与したとき、というのが基本です。(他にも免除になるケースはありますが今回は割愛します)

つまりいきなり免除になるわけではなくて猶予から免除に、その免除もバトンタッチしていく可能性が高いというわけです。

相続税申告は必要なくなる

株式の贈与について事業承継税制の適用を受けて贈与税が猶予されている場合に、相続税申告の必要がなくなると考える人がいますが、前段の猶予から免除への切り替えがあるため相続税申告は基本的に必要です。

財産規模的に相続税申告が必要なさそうという場合には事業承継税制を受けないという選択肢が有効と考えられます。

相続税申告は基本的に必要になるのですが後継者が子や孫の場合はそもそも申告するときに親族ですから問題になるケースは少ないですが、後継者が親族ではない場合はどうでしょうか。

この場合も先代経営者の家族から見たら他人さんですが相続税申告に登場します。

ここの部分をしっかり理解しておかないと先代経営者の親族から反発を食らうことになりかねませんので事前にきちんと説明して理解を得る必要があるのです。

株があるので好き勝手できる

株式があるので好き勝手できる、というのはある意味ではそうなのですが株式を手放すようなことになると(後継者の後継者への贈与・相続をのぞく)、猶予してもらっていた税金の納付が必要になります。

あくまで事業承継のための税制ですので、会社を売却したり廃業する場合など打ち切り要件(猶予打ち切りといいます)に該当した場合には当然、猶予していた税金の納付をします。

いわゆる猶予してもらっていた本税だけなら支払えるケースもあるかもしれませんが、本来支払うべき税金を猶予してもらっていた状態ですので延滞税がかかるのです。

この延滞税は猶予してもらっていた期間と本税の金額によりどんどん膨らんでいくので、ある程度の期間が経過して打ち切り要件に該当すると本税と同じぐらいの延滞税になりかねません。

株式があるので好き勝手できるのは会社の運営上だけで株式を手放すことに対してはロックがかかっているといってもよいでしょう。

まとめ

届け出など要件が多く手続き上は煩雑なため安易に適用できないシステムにはなっていますが、勘違いがあるまま進んでいくとこんなはずじゃなかったとなりかねません。

事前に確認書や念書などをとりつつ、もし忘れてしまったとしても書類を見て思い出せるぐらいには注意して適用したいところです。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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