会社が従業員に対して行える福利厚生は各種ありますが最近ご相談が増えてきたのが従業員の奨学金を会社が負担する、という内容のものです。
以前よりも検討しやすい状況が整っていますので書いてみます。
税務会計処理の変更
以前は従業員の奨学金を会社が負担するということが給与に上乗せのような形が一般的でした。
特に税制上の取り扱いや会計上のメリットなどもなかったので、この場合は給与アップと同じと言えます。
社会保険料や源泉所得税なども徴収の対象でしたし、賞与に上乗せのような形でも同じく課税の対象でした。
取扱いが最近変わりまして、会社側が奨学金の代理返還をした場合、要件を満たしていると社会保険や源泉所得税の対象となりません。
つまりその支払い分から差し引かれることなく、奨学金が減ります。
会計上は給与として計上できますのでその点は後述するメリットとして大きいです。
最近は学生の半数以上が奨学金で大学や専門学校に通学しているというデータもあるそうで、従業員の負担が減り、会社側にもメリットがあります。
また地方自治体からの支援も増えており、会社側負担額に対して補助を出しているケースがあります。
従業員の勤務年数などにもよりますが、要件を満たしていれば申請可能ですのであわせて検討しておきたいところです。
会社側メリットと注意点
会社としては従業員の奨学金の肩代わり・補助をするわけですので支出が伴います。
支払い金額は給与として経費計上でき、社会保険料や源泉所得税の対象外です。給与とすることができますので賃上げ税制(所得拡大税制)の対象です。
また従業員の奨学金負担軽減に繋がりますので従業員が定着する割合や長く勤めてくれる可能性も高まります。
いまはどこの企業も人手不足の課題がありますが採用時のアピールポイントにもなりますし、従業員の退職をおさえる効果も見込めるでしょう。
求人を出しても応募がない、少ない場合には既存の従業員にも辞められると困るはずです。
福利厚生の一環として検討する余地はあります。
注意点としては代理返還の場合には適切な手順がありますのでそれを守ることがまず第一です。具体的には従業員に奨学金の支援分を渡すのではなく日本学生支援機構に支払うという処理となります。
日本学生支援機構のホームページにQ&Aがありますので制度活用に興味がある方は調べてみてください。
特に若手従業員のサポートがメインですので奨学金の代理返還の対象になる従業員が全ての従業員というわけではないでしょう。
その点は十分理解の上で対象とならない従業員に対しても賃金の見直しを含めて検討することをおすすめします。
まとめ
人事を考えるとき採用に重きを置きがちですが、今いる従業員の働きやすさ、仕事のしやすさ、長く続けてくれる環境づくりも大事です。
奨学金の代理返還制度は取り組みやすい内容になっていますので会社の財務状況を考慮しつつ検討してみてください。