特定路線価という一般の方には聞きなれない路線価があります。納税者側が申し出をすることで税務署に設定をしてもらうのですがいくつか注意点がありますので、申し出をするかどうかの検討材料とともに注意点をお伝えします。
特定路線価とは
特定路線価とは道路に接している状態の土地について、その土地が接する道路について路線価が付されておらず税務署に申し出をして路線価を設定してもらうものです。
特定路線価の設定にあたっては
特定路線価を設定しようとする道路に接続する路線及びその道路の付近の路線に設定されている路線価を基に、その道路の状況、地区の別等を考慮して税務署長が評定するもの
とされています。
特定路線価を申し出たとしても周囲よりも極端に高くなったり、反対に低くなったりということは考えずらいです。
周辺状況と不合理にならないようには価格設定されることが基本になるでしょう。
そのため、路線価が付されていない道路にのみ接する土地の財産評価を行う際には特定路線価を申し出するか検討することになります。
特定路線価を使わないと財産評価ができない、というわけではなくむしろ特定路線価を使わないで評価をすると特定路線価を使って評価した場合と比べて評価額が低くなる可能性があるため悩ましいのです。
もちろん納税者有利で特定路線価の申し出をしないケースもありますが、裁決によると税務署側で特定路線価を設定することもできる、とされています。
なので、あまりにも周辺状況を加味して評価額(特定路線価を使わず無道路地などとして評価した評価額という意味)が低い場合には、税務調査の可能性が高まることもなきにしもあらずです。
しかしながら、路線価の設定されていない道路のみに接する宅地の価額は、当該道路に特定路線価が設定されている場合は、その特定路線価の評定について不合理と認められる特段の事情がない限り、特定路線価を基に評価することが合理的であるところ、原処分庁の申出により当該道路に設定された特定路線価(本件特定路線価)は、その評定において不合理と認められる特段の事情があるとは認められないから、本件土地の価額は、本件特定路線価を基に評価すべきである。
(令2.8.21東裁(諸)令2-9)
申し出するかどうか
特定路線価の申し出をして路線価の設定を受けたにも関わらず、この特定路線価を使用せずに財産評価をして相続税を計算したとすると、おそらくですが税務調査の可能性はかなり高まると考えられています。
そのため、申し出には慎重な判断が必要です。
基本的には特定路線価で財産評価するよりも、無道路地などとして財産評価をしたほうが評価額は下がることが多いためです。
そういったことを考慮したうえで申し出するかどうか。
申し出にあたって一方通行だと考えると判断材料はあったほうがよいです。
ひとつが固定資産税路線価と呼ばれるものです。固定資産税を課税するために設定されている路線価ですが、通常の路線価よりもより細かく設定されていることが多いです。
路線価が設定されていない道路についても固定資産税路線価が設定されていることはよくあります。(逆はほぼみかけません。)
この固定資産税路線価がまずは参考になるでしょう。
不動産鑑定士による鑑定評価を検討することも選択肢にはなります。
ただし特定路線価を設定しておいてそれを使わずに不動産鑑定評価を使って申告をした場合の内容について裁決があり、特定路線価の評定について不合理な点がないので特定路線価を使って評価すること、という裁決があります。(棄却、つまり納税者側の主張は退けられました)
特定路線価の評定方法に不合理と認められる特段の事情がない限り特定路線価を正面路線価として評価するのが相当とした事例
https://www.kfs.go.jp/service/JP/89/16/index.html
このように一度設定すると特定路線価の価格設定について不合理な点がなければ基本的にそれが採用されると思っておいたほうがよいです。
なおさら慎重な判断が必要というのがよくわかると思います。
まとめ
特定路線価については本当に悩ましいケースがありますが、特定路線価の申し出をしないで財産評価をやってみてあまりにも周辺と比べて評価額が下がりすぎている場合にはリスクがあると考えるのがよいでしょう。
そのうえで、特定路線価の申し出をするかどうかは各種情報を整理しながら検討していくほかありません。