漫画家・同人作家の方向けに法人の設立についてお伝えします。法人成りではなく別事業をするという作戦もあります。
法人成りはあまり勧めていない
私の事務所では漫画家・同人作家の方が法人成り、つまり漫画業を法人にして運営するということをあまり勧めていません。
というのも、社会保険対策等ができていれば法人化するメリットがあまりなく法人化すると役員報酬を取ることになるのですが、社会保険料がかなり高くなるということもあるからです。
文芸美術国保等で対応ができるのであれば、あえて法人にするメリットが薄いと考えています。
ただ、そういった漫画家・同人作家の方でも法人を作るという選択をされる方もいます。
漫画家・同人作家の法人成りのリスクとしては
- 役員報酬を高く設定すると社会保険料がかなり高くなる
- 法人負担分の社会保険料が増える
- 法人化して事業拡大するということが少ない
- 消費税の免税事業者期間がインボイス制度によりメリットがほぼない
- 個人のときよりもお金の使い方に制限がでる(会社のお金は会社のもの)
- 専門家報酬が増える
といったことがあげられます。
そのため希望される場合には十分にご理解と納得していただいた上でということになります。
いままでも法人成りしたけどうまくいかなかったので個人に戻したいというご相談をいただいたこともありますが、事業を個人に戻すのはそれはそれで手続き的なことなどがかなり手間です。
では法人を作らない選択が全くないか、というとそうではありません。
別事業を法人で行う
例えば漫画家・同人作家としての仕事は個人事業主でやって、他の業務を法人でやるというケースがあります。
この場合には別事業で法人を作るということになり、そちらで役員報酬の支払いがある場合には社会保険(厚生年金や協会けんぽ)の加入をします。
そうなると個人のほうの国民年金・国民健康保険等は脱退です。
例えばアパレルの事業であったり、他の全く違う事業をされる方もいらっしゃいます。
資金が潤沢な場合には不動産業をしたいというケースもありますし、ゲームを作りたかったので法人でゲームを作る事業をするみたいなケースも見かけます。
事業を個人だけでやらなきゃいけないというルールありありませんので、別の事業であれば別で法人を作るというのも選択肢です。
この場合に気をつけたいのは、個人と法人でやりとりがある場合には適切な価格で行えるかどうかはポイントです。
法人を設立するとなると登記が必要ですし、会社=法人のため税務申告は法人税の申告納税です。
規模によっては個人でも法人でも消費税の申告をするということもあるでしょうし、税負担としては別の事業ですので増える可能性はあります。
ただ、給与を役員報酬として取得できるため給与所得控除が使えることや、役員報酬の設定金額次第では社会保険料を抑えられる可能性はあります。
そのほか法人側で人を雇ったりすると社会保険関係や労務関係の手続きが発生するため社会保険労務士に依頼をすることや法人の税務申告で税理士報酬が増えます。
この辺りをどう考えるかで別事業を法人で行うかは検討するのがよいです。
まとめ
その人がやりたい事業を個人事業としてだけでやらないといけないルールはありません。
例えばアダルトコンテンツの作品で資金的な余裕ができてある程度安定してきた、無理しなくてもよい状態になったら別で事業をしてみたかったので法人設立したい、というご相談をいただくこともあります。
別事業は法人でやる、というのは検討の余地が大きいので選択肢に入れておくとよいでしょう。
ただし別事業があまりにも実態がなくペーパーカンパニーのようになっているとそれはそれで別の問題を生みますので注意が必要です。