相続税の税務調査を気にする相続人の方は確かに多くいらっしゃいます。第一に不慣れですし、マルサの女のイメージが強くあるからというのもよく見聞きします。
税務調査を見越した相続税申告のポイントについて整理します。
名義財産の指摘を避ける、説明できるかどうか
相続税の税務調査で一番指摘が多いのは近年では名義預金をメインとした名義財産の指摘です。
国税庁が発表している相続税の税務調査事績でも現預金の計上漏れ指摘が多いのは名義預金関係が多いからと考えられます。
名義財産の発生理由はいろいろありますが、やはりただ単に名義を変えただけの財産については厳しく見られる傾向が強く、意識的であろうとなかろうと、これは亡くなったかたの財産ですよね?という指摘を避けるためにできることを整理しておくのが望ましいです。
税務申告の段階ですべてを把握して計上するというのは難しさもありますが、やらないでよいかというとそういうわけではなく、把握に努めた結果、申告書に反映するかどうかの判断を相続人と行う、というのが大事になってきます。
税理士側でも、いつ税務調査がくるか、調査が来た時に指摘されるか、は正確に把握することはできませんが、調査が来たら説明できそうか、名義財産と指摘されない内容か、というのはある程度わかるものです。
そのために必要なのが申告段階での事前の打ち合わせと申告の方向性のすり合わせです。
事前の打ち合わせ、申告の方向性
相続税の税務調査は相続人の方は特に不慣れです。中小企業の社長で税務調査の経験がある場合でも相続となると話は別です。
相続税の税務調査そのものを経験したことがある相続人のかたはかなり少ないのが現状ですから、税務調査の連絡があった場合には事前に打ち合わせをすることが多いです。
申告の段階でも名義財産と思しき、疑わしき財産がある場合には事前に計上するかどうかの打ち合わせは必須です。
法人の場合には、税務調査がきても致し方ない、その時に対応するから、という経営者の方は多いですが、相続に関しては税務調査は絶対に避けたいというご要望はかなり多いです。
出来れば来てほしくないというレベルではなく、精神的な疲労や不安、対外的な影響も考慮して税務調査が来ないような申告内容にしたいということも比較的ご要望として見聞きします。
どういう方向性なのかはあらかじめよくヒアリングしておくのが望ましいです。
財産規模が大きくなればなるほど税務調査の可能性は上がっていきますし、名義財産と疑わしきものについては当初申告で積極的に計上しておきたいということであれば相続人も含めた財産調査の内容の深度が大きく変わります。
ここをすっとばして相続税申告をしてしまうといざ税務調査があって指摘を受けた時に、思っていたのと違うとなりかねません。
税務調査連絡があったときにも、不安なところも含めてお伺いしますし、どういうことを聞かれるのか余計なことを言わないということをお伝えしています。
事前の打ち合わせがないと変な緊張感から饒舌になってしまう相続人の方もいらっしゃいますので。
まとめ
相続税の申告では税務調査の可能性や申告の方向性を決めておくと相続人の方も安心できます。
やはりその点が一番心配ごとでしょうし、出来れば税務調査に来てほしくないというのは誰しもの願いですから、税務調査がきても大丈夫なようにしておく、書面添付しておく、名義財産をわかっている分は計上する、というのも対策になります。
どこまでやるかは相続人の方と申告段階でしっかり相談しておくのがよいですね。