相続した土地を国庫にいわば返還する仕組みである相続土地国庫帰属制度が令和5年4月27日に開始しておよそ9か月がたちます。
法務省から制度の実績速報値が公表されているので現状をみてみましょう。
実績の速報値
以下の数値は令和6年1月31日時点の全国の速報値です。
- 申請件数:1,661件
- 地目別:田畑637件 宅地608件 山林243件 その他173件
- 帰属件数:117件
- 種目別:宅地52件 農用地24件 森林5件 その他36件
- 却下3件 不承認7件 取下げ154件
となっています。
申請件数に対して帰属件数と却下等の件数が差が大きいので申請したけどいまもって審査中ということなんでしょうか。資料からは読み取れません。
帰属件数の割合としては10%を現状では満たしておらず審査中の案件を除くとどれくらいかはわかりませんが、パーセンテージを素直に読むと狭き門に見えます。
審査にも時間がかかり、実際に帰属するにしても費用が掛かることもあって、慎重に判断しているということもあるかもしれません。制度運用開始してまだ1年経ってませんので。
田畑や宅地が30%超に対して山林が15%にとどまるのは要件を満たしづらいというのが考えられます。
審査に入る前に法務局で相談することになりますが、以下のような土地については審査に至る前にはねられる可能性があります。要件を満たしていないということですね。
このうち建物や抵当権の有無については実際に現地をみたり登記簿謄本を確認するとわかることだったりするので比較的わかりやすいでしょう。
まずは相談を
わたしの個人的な推測ですが、おそらく「境界が明らかでない土地」の要件は申請ハードルの高さの要因になっているのではないかと。
境界が明らかでない土地なんかあるのかと思うかもしれませんが、これが意外とあるのです。
京都市内中心部だとほぼ境界確定していないといっても過言ではないです。測量図もなく公図も信用性が低い状態ですので。
境界確定しようとおもうと隣地所有者との確認や交渉がどうしても必要になってきます。
宅地でも難しいケースが多いのに山林でそれができるかというと難しいでしょう。
ほかにも管理処分に過分に費用が掛かる、有体物が地上や地下にある場合も不承認事由になっており、何も権利がない、建物もない、まっさらな境界確定している土地、ということになるとそもそもそんな土地少ないといえるのではないかなと。
ただ現状は厳しくても制度運用が進んでいくと要件が変更されていく可能性はあります。
いきなり申請しても受理される可能性が低く、また審査を通らない可能性が高くなるだけです。
境界確定などには時間がかかるので、まずはお近くの法務局や司法書士などに相談をしてみるのがよいです。
特に法務局であれば要件のうちどれを満たしていない可能性があるか教えてくれることもあるでしょう。
どこをクリアにすれば相談して明確にしつつ対応可能かどうかを探っていくほかありません。
まとめ
制度開始から9か月ほどで統計情報も徐々に出てきています。印象としては農地と宅地が割合として多いのは境界確定しやすいから、建物があるなら取り壊せば比較的申請のフローに乗りやすいからではないかなと。
これから制度の内容自体も変わってくることもあるかと思いますので制度適用できそうな土地をお持ちの場合はまずはしかるべきところに相談に行かれるのがよいでしょう。