相続税申告や遺産分割協議では財産をもれなく把握するということが大切です。漏れなく財産を把握するためにやるべきことを整理しておきましょう。
現預金
亡くなる前に亡くなることを予見して亡くなった後の葬儀費用などとして引き出すことはよくあります。
この場合とは別に、一般の方には亡くなる前に預金から引き出して現金として家においておけば相続税がかからないという話を信じて実行しているかたもいるのですがそれは全く違います。
預金から現金になっているだけで、相続財産に変わりないので手元現金として計上することになります。
なので亡くなった時点で家で保管していたいわゆるタンス預金も相続財産になりますので、把握しておくようにしましょう。
家に置いてある現金と、財布に入っていた現金などはその亡くなった人の財産だろうというものを計上します。
預金関係は通帳が残っているところはその金融機関に残高証明書の発行を依頼します。
これによって仮に残高証明書の記載がゼロであっても、ゼロだったということの確認をしているわけですから必要な手続きです。
あとで財産の計上漏れがあるほうがトラブルの種になります。
思わぬところに預金が残っている、というのはよくあることで特に遠方の実家や関係が薄れている親族の場合は把握しきれていないこともあります。
またご本人も忘れていた、ということがあり得ますのでやはり残高証明書の取得はしておいたほうがよいでしょう。
当座貸し越しといって預金のマイナス残高、つまり借入債務がわずかですが遠方の支店の口座に残っていたということが最近でも相続手続きのサポートをしていてもありました。
思わぬところから出てくることがあるものですから残高証明書で漏れがないということを担保しておくのがおすすめです。
不動産
不動産の計上漏れはないだろう、と思っている方は意外と多いですがないと思っていることがある、ということはあり得ます。
先日サポートしたところですと、固定資産税の免税点以下の不動産を把握しておらず計上が漏れていたことがあります。
不動産は自分で使っていたり貸していたりすることが多いのでそういう意味でも漏れていないだろうと思いがちです。
ひょっとしたら、ということがあるのであれば該当しそうな市区町村で土地建物の名寄帳を取得することで漏れを防ぎやすくなります。
名寄帳を取得しておくと、その市区町村で亡くなった方の名義の不動産の一覧を取得できますので、把握していないものがぽろっと出てくる可能性はあります。
固定資産税評価明細だけだと固定資産税が課税されている不動産しかピックアップされないので名寄帳で漏れを防ぐというのはそういうことです。
あと漏れがあり得るのは先代名義で不動産の登記が残っているケースです。
そういうことを少しでも聞いた記憶があれば、先代名義の不動産が残っていないかどうかも確認しておくのがよいでしょう。
保険や年金
例えば未支給年金は受取人の財産となりますので相続税の課税対象ではなく受取人の所得として課税対象です。
そのため遺産分割協議で財産の分ける対象にもなりませんし、相続税計算上も財産に計上しません。
また相続税の計算上は計上するみなし相続財産として死亡保険金があります。
死亡保険金は民法上は受取人の財産ですので遺産分割の対象になりません。ただし相続税の課税対象にはなります(死亡保険金の非課税枠はあります)
一方で、死亡保険金のように見えるけれど相続財産として遺産分割の対象になるのが生命保険契約に関する権利です。
これは亡くなった人が保険料を支払っているけれど亡くなった人に保険がかかっておらず、死亡保険金の受取にはなっていないという保険契約です。
こういったものも相続財産になりえますので通帳や保険証券から確認をして漏れがないようにします。
まとめ
相続税申告書の提出後に財産の計上漏れが見つかったり、遺産分割協議でも漏れているとその漏れている財産について遺産分割協議をもう一度やったりと手間がかなり増えます。
こういった計上漏れがあると揉め事につながる可能性も上がりますので可能な限り把握できるように丁寧に財産を把握するようにしましょう。