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相続時精算課税贈与は今後増えるのかどうか

相続時精算課税贈与は今後増えるのかどうか

2024年から相続時精算課税贈与が活用しやすくなる、と言われていますが本当にそうでしょうか。

改正による影響など考えていることを整理してみます。

目次

相続時精算課税贈与の改正内容

相続時精算課税贈与は贈与の一つの形態ですが特徴としては、相続時に精算する、つまり相続の時には足し戻して計算するというのがルールです。

2500万円までは贈与税がかかりませんがその分相続時に財産として足し戻します。

2500万円を超える部分については贈与税率が20パーセントであること、また一度選択すると撤回できないことがなどが特徴です。

これらは特徴でもあるのですがデメリットでもあります。

まず撤回ができないことで暦年贈与に戻すことができませんので適用に躊躇する方が一定数いらっしゃいます。

暦年贈与であれば基礎控除が110万円取れますが、相続時精算課税贈与は贈与税の非課税枠としては2500万円です。

ただし相続の時に足し戻して計算をするので純粋に相続税がかからない範囲で言うと暦年贈与のほうを選択するということが多くなります。現状は生前贈与加算の対象期間は3年ですから。

もし相続時精算課税贈与を選択するとしても値上がりが期待できる財産にしてはどうでしょうか、というのが相続税対策の提案の現場対応です。

もしくはものすごく資産があるような富裕層の場合には相続税率>相続時精算課税贈与の税率となりますので、贈与税率が固定される点をもって早めに多く贈与しておけるということにメリットを感じるケースもあります。

ただしいずれも限定的ですし、こういった事情から相続時精算課税贈与はあまり選択されないというのが相続税対策でのセオリーでした。

ところが来年からの改正で風向きが変わる可能性があります。

いままでは暦年贈与において設定されていた基礎控除110万円が相続時精算課税贈与においても適用されることになったのです。

そもそも2500万円の非課税枠の設定がある相続時精算課税贈与ですが、それはあくまで贈与税のはなしで相続税の計算上は足し戻し対象です。それとは別に基礎控除110万円が創設されて、なおかつ生前贈与加算の対象にならないと。

これはかなり大きな方針転換です。

暦年贈与も合わせて改正されて順次、生前贈与加算の対象が期間が延びて7年になります。

これと比べても相続時精算課税贈与は有利に改正されるように見えます。では実際の適用は増えるかどうか。

相続時精算課税贈与は増える? 認知機能の問題は?

基礎控除110万円が相続時精算課税贈与にも設定されることで確かに相続税対策として活用されるシーンは増えるでしょう。

一部の金融機関では相続時精算課税贈与を推し進める方向性のようです。

ただし、一度選択すると撤回できないというのは変わりがありませんのでそのリスクは残ります。

また死期を予見して相続が発生する、つまり亡くなるであろう年に相続時精算課税贈与を選択して基礎控除110万円だけでも非課税で移転しておくというのも方法としては可能です。

果たしてこれらを利用するシーン、相続時精算課税贈与を選択することは増えるでしょうか。

人間の死期を見通すというのは医学が発展した今でも難しい面があります。

余命宣告されたとしてもその通りに亡くなるかたもいれば余命宣告された期間より短くなってしまったり、また長くお元気で過ごすケースもあると聞きます。

相続開始年において認知機能がしっかりしているかも不確定な要素です。

贈与契約は、贈与者つまり財産を渡す人の「財産を贈与します」という意思と、受贈者つまり財産を受け取るひとの「財産を譲り受けます」という意思が合致して初めて成立します。

相続開始年においては高齢になっている方が多いでしょうし、その場合には認知症の進行があるケースも多いでしょう。

そうなると「財産を贈与します」という明確な意思確認ができない可能性はそれなりにあります。

そこを強行突破して強引に贈与してしまうと「認知症が進んでいたのに贈与したのは相続人がそそのかしたからだ」と揉め事に発展する可能性は十分あり得るのではないでしょうか。

相続において揉め事がおきると精神的にも疲労・ストレスが強いですし、金銭的なメリットも少ないです。

揉め事を回避したい、相続手続きを滞りなくスムーズに行いたいという場合には揉め事に繋がりそうなことは極力排除したほうがよいです。

相続税対策でも揉め事があると未分割での申告になりかねず各種特例も当初申告では適用できず、分割出来て特例が適用できたとしても一時的な税負担は増します。

なによりも揉め事がないようにしようとして選択したことが揉め事の種になってしまうことはやはり避けたほうがよいでしょう。

そういう意味では相続時精算課税贈与であってもより揉め事に発展しやすくなる可能性もありますし、個人的な意見としては相続時精算課税贈与は改正前よりも劇的に増えることはないのではないかと考えています。

まとめ

相続時精算課税贈与は贈与の一形態でもあり、一方の相続人や孫に偏った贈与をするとそれだけで偏らせてもらえなかった相続人には不満が残ります。

その不満が揉め事に繋がってしまう可能性もありますので暦年贈与もですが相続時精算課税贈与の適用にはより慎重な判断が必要です。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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