税理士に相談することのハードルは一般のかたにとっては依然と高いかもしれません。普段から事業をしてればまた違ってくるかと思いますが。
特に相続関連のご相談は事後相談が割と多い印象なのは敷居の高さゆえかもしれません。
いまはネットでいろいろと調べられますし、一般のかた向けの書籍もたくさんあります。特に相続は。だからといってそこで調べたことが正しいとは限りません。
事前相談をすること=リスクマネジメントだと捉えてほしいなと考えています。
素人考えでやって失敗すること
例えば相続税の計算上、小規模宅地の特例という計算特例があります。
特定居住用宅地等という区分が適用できると、330㎡まで評価額が80%減となりますので影響がかなり大きいです。
1億円の評価額の場合には2,000万円として相続税計算上は計算することができるため、この特例を適用したいと考える方は多いです。
亡くなった方と相続人が亡くなった方が所有している居住用不動産に同居している場合には適用できる可能性が高まります。
要は実家で同居している場合には最も適用可能性が高くなるのですが、これを狙って住民票だけ実家に移すみたいなことをやっているケースが時々みかけます。
こうなると形式上だけ同居しているだけで生計一でもなんでもないでしょうから、実態をみると税務調査があったときにはダメと言われる可能性がかなり高いです。
ほかにも実家に住んでいた親が介護施設や介護設備のあるいわゆる高齢者専用介護付き老人ホームなどに入居した場合にもこの特例を何とか適用したいということで、老人ホームに親が入った後に実家に居住を移すケースなどもあります。
この場合は、親が老人ホームに移ってから実家に戻っているわけですから同居しているとは見れないですし、老人ホームにかかる費用、親の生活費を負担していなければ生計一とも言えません。
小規模宅地の特例の特定居住用宅地等についてはその適用範囲が年々狭まっています。
というのもこうして無理くりに適用しようとして抜け穴を突いてきた結果、その抜け穴をふさぐ形で税制改正により適用要件を厳しくして範囲が狭まってきているからです。
他にも贈与していたつもりでできていなかった名義預金になってしまったなどいろいろとあります。
それをするとリスキーです、という判断が一般のかたにはつかないと思いますのでエイヤーでやってしまうとこういうことが起きがちです。
相続税申告のときに相続人と適用できる出来ないで揉め事になるケースもあり、こちらも慎重に判断したい部分ですので自己判断でやっていることは自己責任でお願いしたいという気持ちはやはりあります。
代案、うまくいく方法の提案
事前にご相談があると、「やろうとしていることはリスクが高い」とお伝えすることができます。
ただそれを伝えるだけならいわば誰でもできてしまうわけですので、そこにとどめないようにはしています。
代案であったり100%ではないけれどうまくいくかもしれない方法の提案はやはり大切です。
例えば前述の小規模宅地の特例だと同居できない、老人ホームに入る、誰も住まない実家ということであれば売却することも選択肢です。
これがマンションであれば相続空き家特例による控除は使えませんので、生前にご自身の居住用として売却して3000万円の控除を受けるというのも所得税の計算上は有利です。
不動産売却による現預金が増えることで相続税は増える可能性はありますが、無理して小規模宅地の特例を適用して税務調査でダメと言われる可能性と、不動産はないので小規模宅地の特例はそもそも問題になりませんし分けやすい現預金が手元に残る、どちらがよいでしょうか。
老人ホームに入る前に実態としても同居できるならタイミングの問題でしょうから適用できるかどうかはよく検討したほうがいいでしょう。
事前にご相談をいただければご提案できることはありますし、ダメというだけにせずこうしてみてはどうか、ということは積極的にお伝えしています。
それが税理士に事前相談することのメリットでもあり、ご自身のリスクマネジメントにもつながります。
まとめ
税理士に事前相談することのハードルは高いかもしれませんが、相談しないことで後で困ったことになるケースは実際にあります。
もう少し早くご相談に来ていただければよかったのに、と思うことは本当に多いので、思い立った時にお近くの税理士もしくは税理士がいる相談会に行ってみるのがよいです。
士業でお付き合いがあるかたがいれば紹介してもらうのもひとつです。