まだタイミングじゃないな、という方はぜひ毎月末の事務所通信メルマガ(無料)の登録をこちらから!

役員退職金で特に気を付けたいポイント

役員退職金で特に気を付けたいポイント

役員退職金は社長や会長にとって大きな出来事です。金額も多額になることがありますし、認識違いがあると税務調査で指摘され全額否認されるようなことがあると会社への影響も多大です。

役員退職金関係で特に気をつけたいポイントを確認してみましょう。

目次

退職の事実があるかどうか

社歴が30年とか40年あるような中小企業ですと多くが創業者でパワーのある方が社長だったりします。だからこそ会社が大きくなってきたともいえるでしょう。

こういった場合に役員退職金を支給するときにはよく聞かれるのが「退職金をもらってからも会社に来てよいか」ということ。

押しの強いワンマン型の社長だと仕事が生きがいみたいなこともよくありますし、後に託したとはいえ会社のことが心配でたまらないわけです。

何より自分がまだ株主だったりすると会社に行って何の不都合があろうか、と思うようです。

こういったケースで特に注意しなければいけないのが退職の事実があるかどうか、という点です。

一般的な感覚だと退職金を支給しているのだから退職しているだろうと考えるのが自然ですが、退職金を支給されても会社に来る前社長や会長というのは存在します。

役員退職金の支給があったのであれば会社のことからキッパリ身を引いてもらうのが一番シンプルかつ疑われることがない状態にできます。

会社に来て決済をしたり経営会議に出席したり、次の社長のサポートや相談を受けたりしていると、退職してないのでは?と税務調査ではが疑われます。

もし仮に退職の事実がないと認定されてしまうと、数千万から場合によっては億単位の役員退職金が否認、つまり税金計算上の経費ではないとみなされます。

この手の税務調査でのトラブルは以前から指摘されていることですし、経営に従事していないことというのはある意味事実の積み重ねですから、金額うんぬんよりも税務調査で争点になりやすいのです。

税務調査官も役員退職金の支給が確認されている会社の調査の際にはやはり重点的に確認してきますし、増差(修正申告等で加算税などの追徴)がとれると自分の成績にもなりますからやはりチェックは厳しくなると言われています。

社長退任の前後、特に退任後において退任前と同じような仕事のしかたであったり経営に関与していると見做されるとかなり大きな会社へのダメージがあり、個人も申告内容が変更になります。

役員退職金の支給後はあらぬ疑いをかけられることを避けるためにも会社には来ないようにしてもらうというのが安全な対応ですしアドバイスしておくべきことです。

税務上の役員退職金のセーフティライン

創業社長は特に会社の資産は自分のものだという認識がある経営者がいることもまた事実です。

筆頭株主であればそういう意識も芽生えるでしょうしワンマン社長だとそうなりがちです。

ただ創業社長の希望する金額について追認するだけなら税理士は不要です、あくまで税務上のセーフティラインを明示し、いかにすべきかのアドバイスはことさら重要です。

功労加算金などの名目で割増したい気持ちももちろん分かりますが、セーフティラインとされる計算式として平均功績倍率法では

最終の月額役員報酬×在任期間×功績倍率=役員退職金としてセーフティと考えられる金額

と計算をすることがベターです。

特に税務調査があったときに問題となるのは事前確定届出給与を支給している場合の最終の月額役員報酬と、功績倍率の2点です。

事前確定届出給与を支給している場合にはいわゆる月々の役員報酬としての定期同額給与は抑えることが多く、社会保険料対策で役員報酬を事前確定届出給与に偏らせていることがあります。

年間で見ると1800万円だとしても中身が20万円×12ヵ月(定期同額)+1560万円(事前確定)だと最終の月額役員報酬の認識にズレが生じます。

一般的には事前確定届出給与を支給していない会社のほうが多いとされていますから、実務上は事前確定届出給与の分を最終の役員報酬月額に含めないという対応が一般的です。

つまり、年額で1,800万円だとしても、定期同額給与だと月150万円×12ヵ月ですから最終月額報酬の金額は150万円で計算できます。

前例のように事前確定届出給与1560万円を含めている場合には最終月額報酬は20万円で計算します。

事前確定届出給与を含めて12で割るという処理が以前は出来ていたことがありますが、いまは裁決などで否定されていますので否認されるリスクの高い処理になります。

また功績倍率については税務調査の現場では代表者、創業社長ですと3倍というのがラインで、もし仮に税務調査で揉めて審判所などで争いになったときにはそこから大きく下げられる可能性があります。

功績倍率には功労加算割合なども含まれているとされていますから割増しとして3.5倍とか3.7倍とかそういう数字を使って計算をすることもリスクが高まる要因です。

まとめ

役員退職金は金額も多額になりますし、会社が長く続いていて好調であればあるほど創業社長などは1億円を超えることも珍しくありません。

最初で最後の役員退職金になるでしょうからミスや疑いをかけられないように丁寧な対応をしておきたいところです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

目次