マンションについての財産評価、相続税計算上の価額計算のルールが変更になる予定です。
マンションの市場価格と相続税評価額との差額が大きくなりつつあり、それを是正するための新しいルールの導入とされています。
2回に分けて新マンション評価通達を整理していきます。
おさらい まずは相続税評価の現行ルール
財産評価の現行ルールをまずは確認しておきましょう。路線価地域にあるマンションを前提とします。
マンションの一室を持っている場合には区分所有という形で所有しており、マンションの敷地については持ち分で所有し、建物は一室部分を所有しています。
マンションの敷地は全体で財産評価をするのですが高層マンションになればなるほどその持ち分に応じた面積が小さくなりますので、評価額は路線価が高い地域でも小さくなる傾向が強いです。
500㎡のマンション敷地が路線価250千円/㎡に接しているとします。
細かい補正率はここでは考慮せず、マンション敷地全体について評価額は250千円×500㎡ですので、1億2,500万円の評価額計算です。
これに持ち分を乗じるわけですが仮に50分の1だとすると250万円の評価額です。高層マンションになればなるほど持ち分は少なくなりますので土地の価額は小さくなっていきます。
建物部分については相続税評価額は固定資産税評価額がベースです。通常、建物は建設したときに6~7割に評価額が下がるといわれています。
仮に1億円で建物を建てると6,000万円ぐらいにはなるというのが一般的です。
新築マンションの場合には広告費などがそこに売買価額にオンされていますが、固定資産税評価額は構造などを元に計算されるので売買価額を考慮されていません。
マンションは買ってきた時が1億円でも財産評価上は土地建物を合わせて5,000万円ぐらいになることはよくあり、この市場価額と相続税評価額の差額を利用した相続税対策は富裕層にも人気がありました。
この状態を是正するためのマンションの新評価通達、ルールの変更というわけです。
新評価通達の確認
新しい評価のルールは2024年1月1日以後に相続、遺贈、贈与により取得した不動産について適用されます。
対象としては戸建てやマンション一棟ではなくマンション一室についてがルール適用の対象です。
新しい評価ルールの算式は以下のようになっています。
(一室の区分所有権等にかかる敷地利用権の価額+一室の区分所有権等にかかる区分所有権の価額)×補正率(※)=評価額
敷地利用権の価額の部分はいままでの土地の評価方法と同じです。自用地としての評価額をまずは計算し、区分所有権の価額の部分はいままでの建物の評価方法と同じで、固定資産税評価額をもとに計算します。
いままでの評価額に対して補正率を乗じて新しい評価額を計算するんだなという認識でひとまずOKです。
ややこしいのはこの補正率(※)の部分の計算です。いくつかに分かれていますので見ていきます。
評価水準が0.6未満の場合→評価乖離率×0.6
評価水準が0.6以上1以下の場合→1
評価水準が1超の場合→評価乖離率
新しいのがでてきましたね、評価水準と評価乖離率です。ここがポイントになります。
評価乖離率がゼロまたはマイナスの場合は評価しない、とパブリックコメントを受けて修正されています。
評価水準=1/評価乖離率 という算式となりますから評価乖離率が分かれば評価水準が分かり、評価水準が分かれば補正率が計算できるという仕組みです。
つまり評価乖離率を把握することが今回の新ルールでは重要になってきます。では評価乖離率の算式を見ていきますがここからさらにややこしくなるのでこんなもんだという認識でひとまずOKです。
評価乖離率=A+B+C+D+3.220
- A:その区分保有建物の築年数(1年未満の端数は1年)×△0.033
- B:その区分所有建物の総階数指数(※)×0.239(小数点以下第4位切捨)
- C:その区分所有等にかかる専有部分の所在階×0.018
- D:その区分所有等にかかる敷地持分狭小度(※)×△1.195(小数点以下第4位切上)
総階数指数(※)は①総階数÷33 ②1 ③①と②のいずれか低いほうの数値
(総階数には地階を含まない)
敷地持分狭小度(※)は敷地利用権の面積/専有部分の面積 小数点以下第4位切上
Aは建物の築年数から経過している年数が長いと評価としては下がるでしょうということでその部分を考慮しています。
Bは階数が高い建物のほうが価値が高いでしょうということを考慮しています。
Cは所在階が高い方が価値が高いだろうということを考慮していて、Dは持分が小さければその分評価が下がるだろうということです。
次回はこの評価のルールを実際に手を動かしてみて検討してみます。それが一番わかりやすいでしょうし。
まとめ
新しい評価のルールは所有しているマンションの一室がどういう属性(何階建ての何階にあるのか、新築か築古かなど)を持っているか一応考慮していると言えるでしょう。
ただし、これですべてが解決するわけではなくここから外れる物件もでてくるはずです。
場合によっては不動産鑑定評価を取ったほうが良いケースもあると考えていますのでこれでやれば大丈夫だ、というわけではないことは頭の片隅に置いておきたいところです。