配偶者や親族に給与の支払いができるか?というのはご相談をいただくことがあります。個人事業主であれば青色事業専従者給与として、法人であれば非常勤役員などとして支払うことは可能です。
制度上可能ではありますが、無制限という訳ではなくもちろん注意点がありますので整理しておきます。
業務への従事
当たり前と言えば当たり前ですが業務に従事していることが前提です。青色事業専従者給与のご相談では特に多いですが、他に仕事をしていてもよいか?というのもここに通じます。
青色事業専従者給与は文字通り専従者給与ですので専ら従事しているという意味合いがあります。
基本的には仕事ができる期間の半分以上はその事業専従者として仕事をしていることが前提条件です。
青色事業専従者給与をもらいつつパートアルバイトをしている自営業者の配偶者というのをみかけますが、税務調査があったときに指摘される可能性があります。
青色事業専従者として給与の支給があり、なおかつパートアルバイトとしてフルタイムで仕事をしているような形になってしまっていると、青色事業専従者として業務をしているのだろうか?という見方ができます。
物理的な問題で仕事ができる時間のほぼそれに費やしている状態が専ら従事といえますので、外でパートアルバイトをフルタイムでやっている時点で専ら従事していないのでは、となってしまうからです。
専ら従事するその仕事の内容にもよるのですが基本的にはパートアルバイトを兼務するというのはそのパートアルバイトの仕事時間が増えれば増えるほど上記のような指摘を受ける可能性は増します。
どのぐらいの時間なら大丈夫というのはなく、兼務している時点から危険性が増すと考えておいた方がよいです。
非常勤役員にも同じことがいえます。
特に法人成りして非常勤役員に親族に入ってもらい役員報酬を支払う場合でも、業務に従事しているということは前提条件です。
まったく、あるいはほぼ仕事をしていないにもかかわらず役員報酬の支払いをしている状態だと非常勤役員としての職務を果たしていないとみられる可能性はあります。
何も業務をしていない人に給与の支払いができるほど甘くはないということです。
業務内容と支給額の妥当性
業務に従事しているから問題ない、という事業者でも注意点はほかにもあります。
青色専従者給与や親族の非常勤役員に役員報酬を払うという場合には通常とは違って、親族という属性が加わります。
家族だから給与・役員報酬を高くしているのではないか?という点に注意が必要となります。
業務内容と比して支給額が高いケースとしての目安は、第三者に同じ業務内容で同じ給与を支払えますか?ということのチェックが重要です。
第三者に同じ業務で同じ給与が支払えないのであれば、家族だから、というバイアスがかかっている可能性があります。
その視点で一度、青色専従者給与や非常勤役員など親族に対する役員報酬を見直してみましょう。
業務をしていることは前提ですが、一般的な水準から大きくかけ離れていないか、というのはチェックしておきたいところです。
また事業に従事した時間や業務内容の記録はしておいたほうがよいです。税務調査があったときに説明するための資料として重要となります。
未支給がないこと
未支給がないことも気にかけておきたいポイントです。
というのも未支給があって支払いができていないということは形式上だけ給与や役員報酬を支給しているとみなされる可能性があるからです。
青色事業専従者給与がらみで多いのは医院やクリニック関係の事業への税務調査時に、配偶者である看護師兼事務長のような職務の方への過大給与が指摘されることがあります。
この場合でも未支給だといわば後手に回るような感じになってしまい、資金繰りも問題ないのに支給されていないことを追及されたりします。
役員報酬についても同じで、資金繰りの関係で2~3か月保留するぐらいであれば問題にならないケースは多いですが、一年間未払いとかだと、そもそも支給されていないのと同じではと見られかねません。
まとめ
非常勤役員は特に税務調査があったときに業務内容に対して過大と言われるケースが多いです。
役員ではなくても特殊関係使用人と言って親族に使用人として給与支払いしている場合には同様にチェック対象となります。
親族への給与・役員報酬は税務調査があった際には重点チェック項目になりがちですので、慎重に丁寧に金額設定や業務日誌、業務時間の記録などをしておき説明できる状況を整えておきましょう。