インボイス制度が始まった後の経理の業務フローなどを整理しお伝えすることが増えてきました。
特にインボイス登録をしていない事業者への支払いについては消費税部分の取り扱いが変わりますので注意が必要です。
今までは
今までの取り扱いをまずは確認しておきます。
インボイス制度前の今までは仕入税額控除、つまり支払った消費税部分の計算は相手方が免税であろうが課税であろうが変わりませんでした。
取引の種類によってのみ変わってくるということです。
例えば不動産賃貸でいうと居住用の賃貸の場合は家主さんが消費税の課税事業者であっても免税事業者であっても居住ようなので消費税は非課税取引です。
事業用の賃貸についても同様に消費税の課税事業者でも免税事業者でもこちらは消費税は課税取引です。
仮に事業用賃貸で110,000円の賃料を支払っているとしましょう。
仕訳としては以下のように2種類です。税抜き処理をするか税込み処理をするか。
ちなみに消費税部分を税抜き処理しても税込み処理しても利益計算や消費税の納税額は理論的には変わりません。
税込処理の場合
(地代家賃)110,000(現預金)110,000
税抜処理の場合
(地代家賃)100,000(現預金)110,000
(仮払消費税)10,000
という内容です。
今までは取引相手の消費税の課税事業者か免税事業者かの区分は仕入税額控除の金額に対して影響がなかったのですがインボイス後は変わってきます。
インボイス後は
ではインボイス制度が開始後はどうなるか。
前段の例で言うと居住用の賃貸については内容は変わりません、元々が非課税取引なので仕入税額控除の話がでてきませんので。
問題は事業用賃貸などの課税取引です。
相手方がインボイス登録をしている場合には今までと変わりません。インボイス登録をしているからです。
(地代家賃)100,000(現預金)110,000
(仮払消費税)10,000
という処理です。今まで仕入税額控除(仮払消費税)の金額は変わりません。
では取引相手がインボイス登録をしていない場合はどうなるかというと、2023年10月から2026年9月までの3年は仕入税額控除は8割、2026年10月から2029年9月までの3年間は仕入税額控除は5割、2029年10月からは仕入税額控除はゼロです。
仕訳で示すと以下のようになります。
最初の3年間
(地代家賃)102,000(現預金)110,000
(仮払消費税)8,000
その次の3年間
(地代家賃)105,000(現預金)110,000
(仮払消費税)5,000
さらにそのあと
(地代家賃)110,000(現預金)110,000
となります。
注意点としては仕訳入力の時点で仮払消費税を減らす形にするのか、決算の時などに仮払消費税を減らす形(雑損失で決算処理)にするのかの違いで、控除対象外消費税の処理ではないという点です。
※あとで修正する形にするとおそらくですが処理が漏れることが多発しますのでオススメしません。あくまで個人的な経験からですが。
また、本体価格が変わるということは固定資産などの計上金額も変わることを意味しますので特に注意が必要です。
いわゆる本体価格が本当は100,000円だったはずなのに、6年経つと相手方がインボイス登録をしていなければ110,000円に帳簿上はなります。
どこまでをどれぐらいの頻度で
経理のかたはこれは大変そうだぞと感じると思います。それも当然でしょう。全ての経費や仕入の課税取引についてこの判断をしないといけなくなります。
会計ソフトによっては取引先情報に事前にその取引先のインボイス登録番号を設定しておくことで仕訳入力時には自動で上記の処理をしてくれるような仕様のものが多いです。
そういったことで対応できる部分は可能な限りやっておいた方がよいです。
いきなり毎月取引先がガラッと変わるみたいなことは少ないでしょうし、制度がスタートしてからだと現場が混乱します。
そうでなくとも処理が増えるのに、じゃあ誰がどのタイミングで責任をもってインボイス登録番号を確認するのか、というルール決めがないと全部の処理が後工程に回される可能性が高いです。
また、取引頻度が多いとか金額が多い先だと一度確認すれば事足りることが多いと考えられますが、細かい支出、例えば営業担当者の出先での駐車場料金、とかはどうでしょうか。
毎月何百枚もあるような会社だと番号確認の処理だけで時間がかかります。どこまでどれくらいの頻度で確認するか決めていますか?
経理での判断がつかないのであれば経営者が判断する事項ですし、こういうことが起こり得ますということは事前に役員や幹部に伝えて指示を仰ぐべきです。
まとめ
インボイス制度の主旨としては納税がない仕入税額控除の排除です。それが段階的ではあるものの6年かけて実施される予定です。
消費税の課税事業者で原則方式で申告をしている場合には特にその間の事務的負担はかなり増えるのでルールを決めたうえで運用しつつ必要に応じて修正していくのがよいでしょう。