相続で揉めている場合でも相続税申告が必要なケースであれば申告期限内に申告をして納税をする必要があります。
この際の注意点について整理しておきます。
期限内申告と納税 未分割申告
申告期限までに遺産分割協議が整わない場合には未分割申告という、申告の内容で申告をすることになります。
実際のところは遺産分割協議が申告期限の前日に整っても間に合わない可能性がありますし、分割の内容を申告書に反映させて申告書を完成させ納税額を確定させる必要があります。
なので申告期限の2~3日前に分割協議が整いました!と言われても間に合わない可能性があります。
出来れば申告期限の1カ月ぐらい前には分割協議が整っている方が望ましいです。
財産が基礎控除を超えている場合には相続税申告が必要になり、申告期限は亡くなってから10ヵ月です。
そこまでに申告をし納税をすることになりますが、未分割の場合には各種特例が適用できませんので相続税は特例適用前の高い金額で計算されます。
その特例適用前で計算された相続税を相続人自身の財産から納税をしていただきます。
遺産分割が整っていないと金融機関の口座解約等ができませんので遺産から相続税を支払うということができないからです。
一部を引き出せる制度もありますがその引き出せる金額(相続開始時の預金残高×1/3×法定相続割合)ですので、相続税の納税に足りない可能性はあります。
未分割申告をした後に分割が確定した場合に備えて、3年以内の分割見込書と呼ばれる書類を最初の申告の際に提出しておきます。
これによって、分割が確定したときに改めて申告をする際には適用できなかった特例を適用して申告することが可能です。
多くの場合には納めすぎていた相続税が返ってくる申告内容(更正の請求といいます)になることが多いです。
財産の把握
揉めている相手方の相続人が亡くなったかたと同居していたりすると財産の把握が難しくなるケースがあります。
揉めているわけですから基本的に非協力的です。
そうはいっても財産を把握しておくことは、遺産分割協議、調停や裁判に向けて必要なことですし、相続税申告のためにも大事です。
相続人のかたが直接、預金があったであろう金融機関に直接出向いて手続きをしてもらうこともありますし、弁護士に委任している場合には弁護士が動きます。
相続人本人が対応する場合であれば残高証明書は取得できますので、もし金融機関の窓口で渋られるようなことがあってもきちんと説明して必要な書類(残高証明書や取引履歴、預金の異動履歴)は手に入れましょう。
財産の計上、把握が漏れたらどうすれば、というご質問をいただくことがありますが、申告後に判明した場合には修正申告で対応するかどうかを検討します。
できれば計上漏れはない方が望ましいのですが揉めている相続の場合は通常よりも発生しやすいことは念頭に置いておきましょう。
相手方との申告内容の確認
相手方とある程度話し合いができる、という場合には申告内容のすり合わせをしておくことも検討しましょう。
甲さんが亡くなって相続人がそれぞれ申告書を作成して提出することは相続税申告書において出来ます。
となると相続人が複数いる場合にはそれぞれ違った内容の申告になる可能性もあって、税務署側では同じ人が亡くなっているのに申告の内容が違うと、どれが正しい内容なのかを確認したいという方向で考えるようです。
よって、相続人がそれぞればらばらに申告をすると相続税の税務調査の可能性が高まるとされています。
これをどうしても避けたい、という場合には事前に相続人それぞれが依頼した税理士同士で申告内容の確認をしておくことがあります。
反対に相手方から相続財産の開示等がなく、財産の中身がよくわからない、という場合には税務調査に来てもらって財産の把握をしてもらうことを期待する、というケースもあるようです。
税務調査は出来れば来てほしくないというかたのほうが多いでしょうから、事前に相手方と打ち合わせができるのであればそれが望ましいです。
まとめ
遺産分割で揉めると時間もお金も失うことになりかねない、ということを先日このサイトでも書きました。
相続税申告がある場合でも期限は待ってくれませんのでもし揉めている場合には早めに弁護士、税理士に相談をしましょう。時間が経って申告期限が近付くほどに税理士も依頼を受けられなくなる可能性が高まります。