相続税や贈与税の支払いがある時に、誰が支払うのがよさそうか、自分が支払うべき税金を誰かに負担してもらったらどうなるか、というのを整理しておきます。
相続税を肩代わりしてもらったらどうなる?
例えば相続税の納税については配偶者は税額軽減があるので納税負担がない、少ないケースがあります。
この場合、他の相続人の相続税を肩代わりするとどうなるか。
本来、その相続人が支払うべきものを別の人が支払っているわけですので払ってもらった相続人からすると得しています。
そのため、相続税の支払いを肩代わりすると贈与になる可能性が高いです。
相続税の支払いをした次の年に、他に贈与されているものがなければその肩代わりしてもらった相続税分の金銭が移動したものとして贈与税の申告をします。
2023年に相続税300万円を肩代わりしてもらった、とすると2024年に贈与税の申告をします。
金額としては300万円ですので、300万円-110万円=190万円 190万円×10%=19万円という計算になります。
この金額を贈与を受けたひと(=今回のケースだと相続税を肩代わりしてもらった相続人)が納税します。
他に贈与を受けた金銭等があれば300万円にプラスされます。
相続税の支払いの段階で税務署から贈与ですよ、という指摘を受けることはないのですが、相続税の税務調査ではそれとなく確認されます。
というのも、相続税の税務調査の場合、亡くなったひともですが相続人や親族、同居していたひとなどの預金口座はチェックされます。
その際に、例えば相続人の預金口座から相続税を支払った形跡がない場合に、どこから相続税を支払ったのか、ということを確認された際に贈与を指摘されることがあるのです。
相続人ではなく相続税の支払いがなかった配偶者の口座からそれっぽい支払いがあると確認されます。
また、亡くなったかたの自宅に保管していた現金で支払ったという場合には、その現金は亡くなった時点では自宅にあったことが予想されますので相続財産に該当するのではないかという指摘がされることも。
だれが相続税をどこから支払ったか、というのは相続税の税務調査で確認されることがありますので注意しておきましょう。
もし仮に肩代わりしてもらったとしても翌年に贈与税の申告をしていれば大丈夫です。
贈与税の肩代わりも贈与税の対象
相続税だけではなく贈与税を肩代わりしてもらった場合もその贈与税相当が贈与されたものとされます。
例えば第三者に高級外車3,000万円をプレゼント、つまり贈与をした場合を考えてみましょう。(他に贈与を受けていないという前提にしておきます)
赤の他人さんに3,000万円を贈与したら翌年の贈与税は以下のようになります。
2023年に高級外車3,000万円を贈与した
2024年は、3,000万円-110万円(基礎控除)=2,890万円 2,890万円×50%-250万円=1,195万円の贈与税という計算です。
ではこの贈与税1,195万円を肩代わりしてもらったらどうなるか。
2024年に1,195万円を贈与したことになりますので、2025年に贈与税の申告が必要になってきます。
2025年は、1,195万円-110万円(基礎控除)=1,085万円 1,085万円×45%-175万円=313.25万円の贈与税という計算です。
さらにさらに2025年に支払うべき贈与税(1,195万円)の肩代わりによる贈与税(313.25万円)を肩代わりしてもらったらどうなるか。
2026年は、313.25万円-110万円(基礎控除)=203.25万円→端数処理で203万円とすると、203万円×15%-10万円=20.45万円の贈与税の計算です。
全部肩代わりしてもらったものとしてまとめると
- 2023年に高級外車3,000万円の贈与を受ける
- 2024年に贈与税1,195万円の納税→肩代わりしてもらったら
- 2025年に贈与税313.25万円の納税→肩代わりしてもらったら
- 2026年に贈与税20.45万円の納税→肩代わりしてもらっても翌年はそれについては贈与税がかからなさそう(他に贈与されたものがない前提)
誰かに高額な資産をもらったり金銭を贈与されて、贈与税そのものを肩代わりしてもらうとそれに対してさらに贈与税がかかる、というループが生まれます。
こういったケースはまれかと思いますが、状況としてはあり得えます。
まとめ
一般の方が考えるよりも相続税の税務調査は厳しいものですし税金の肩代わりはチェックされます。贈与税の対象であれば適切に贈与税の申告をして納税をしておきましょう。
肩代わりそのものは問題にはなりませんがそのあとの処理が適切かどうかが大切です。