相続税対策をするときには資産の組み換えをご提案することがあります。
現預金の組み換えのうち3つについて効果と換金性を検討してみましょう。
現預金→死亡保険金
相続税の計算上、死亡保険金は法定相続人の数×500万円までは相続税がかかりません。
死亡保険金の契約がない場合にはまず最初に検討します。現預金のうち余剰として見れる部分を死亡保険金に組み替えるとその分相続税も下がります。
相続税率が仮に10%だとすると、現預金1500万円について150万円の相続税課税となります。
死亡保険金1500万円に組み替えることができれば、法定相続人が3人の場合だと相続税がかからない範囲に収まりますので相続税がかかりません。
これだけで150万円の相続税が有利に計算できます。
また、すでに死亡保険金が出るタイプの生命保険の契約がある場合には、受取人も検討対象です。
配偶者が受取人の場合には配偶者から他の相続人に受取人変更するかどうかもポイントです。
亡くなった後の生活資金としての側面も配偶者受取の死亡保険金にはあるかと思いますが、そもそも相続税が配偶者の場合にはほとんどかからないケースが多いので、その点を加味して検討します。
換金性については死亡保険金の場合は早ければ手続きをしてから1週間ほどで入金になります。
遺産分けの対象になりませんので遺産分割手続きを経ることなく受取人の手元に入ります。そのため、相続税の支払いに充てることを予定して契約を検討していただくことが多いです。
ちなみにですがこの死亡保険金の活用は一次相続だけではなく二次相続を見据えた形をとれると効果が高まります。
現預金→不動産
現預金がたくさんあって不動産賃貸をしたいとか、子や孫が自宅を買うため援助したいという場合には検討することがあります。
子や孫が自宅を買うための援助は住宅取得等資金贈与による贈与がおすすめです。
ただし、換金性で言うと死亡保険金には劣ります。不動産の売却処分は通常思う通りのタイミングでいかないものですし価格も希望する価格で売れないこともあります。
共有不動産になると共有者で意志の統一(売るタイミングと価格)が必要になってきますのでハードルが高くなる、揉める可能性もあります。
一方で相続税への影響という点で考えると効果が大きいこともありますので、相続税多額にかかりそうで不動産購入の動機が相続税以外にある場合には実行されるケースが多いです。
例えば建物を購入した場合には相続税の評価上は固定資産税評価額をベースに計算をします。
一般的な話ではありますが、5000万円で購入した建物はどれくらいになるかというと場合によっては7割、6割ということもあり得ます。
現預金5000万円で購入した建物が3500万円、3000万円の評価額になるということです。
この組み換えについては効果が高い部分もありますがその分資産が目減りすることも意味します。
この辺りを受容できるかどうかにもよります。
購入した不動産を賃貸に回すとなると借り手の権利を評価上は加味しますので評価額はもっと下がります。
土地についても建物で見たように現預金で持っているよりも評価額が下がる側面があり、貸しに出すとさらに下がります。
これに不動産購入のための融資を受けると債務が増えることになりますので相続税への影響はかなり大きいです。
ただし、この不動産購入による時価と評価額の差額を使った相続税対策は裁判等で否認される可能性があるので慎重な対応が必要です。
裁判等で否認されるというのは簡単に言うとその方法はダメ、と言われるということです。時価(不動産鑑定などによる価格)で相続税を計算してくださいとなると本末転倒になってしまいます。
まとめ
資産の組み換えによる相続税対策についてお伝えしました。有価証券については触れませんでしたが相続手続き自体が煩雑(遺産分割のみならず、被相続人が所有している証券会社に相続人名義で口座開設をして移管しそのあと売却)だったり値動きがより上下動があるためケースバイケースです。
死亡保険金や不動産への組み換えについては相続税のシミュレーションを十分に行い換金性や相続税支払いなども加味して検討しましょう。