相続や遺言のご相談で配偶者への相続割合をどうするか、というポイントがあります。全部ご相続してもらうことも選択肢にはなりますがメリット、デメリット含めて考えてみましょう。
全部相続してもらうメリット
配偶者に全部の財産を相続してもらうことのメリットがあるのか?と疑問に思うかもしれません。
このあとで触れるデメリットで二次相続と合わせた相続税が増える、というものがありますので配偶者に相続してもらう分を控えめにするということもよく見かけます。
ただ相続税だけをみると二次相続合わせた税額トータルで有利になるから、というのが正解になるかもしれませんがそれだけを考慮していると困ることもあり得ます。
ひとつは配偶者の方の財産が少ない場合には生活資金など含めて不安が残るという点です。
遺族年金などがあればある程度それで賄えることも多いですが、ご自身に財産が少ない状態だと選択肢が狭まります。
例えば、相続財産をあまり引き継がなかった配偶者の方に介護が必要な状態になった場合を考えてみましょう。
お子さんがいて相続をしているのであればそこから介護などの費用をそれぞれ負担することも考えられますが、ここで紛糾する可能性もあります。
仮に介護が必要になってご家族が面倒を見ることが難しく施設に入るとか、介護付きのマンションなどに転居したほうがよさそう、となったときにお住まいであるご自宅を相続していると自宅を売却してそれを原資にすることも可能です。
おひとりになったときにその施設に入るなどの選択をして、不動産をご自身の代で処分しておくのもよいかもしれません。
そのうえで配偶者の方が亡くなったときに残った財産を分けるというのもわたし自身サポートをしていて経験したことがあります。
不動産はやはり分けにくいものでもありますし、ご存命でお住まいだった不動産を処分すると居住用の3,000万円控除なども譲渡所得税の計算の際に検討できます。
相続空き家の譲渡特例も選択肢としてはありますが、居住用の3,000万円控除よりも適用のハードルが高いのです。
配偶者の方が財産を引きついでからも長くお元気であることが増えています。配偶者の方の安心を優先する、という選択肢も検討してみてください。
全部相続してもらうデメリット
配偶者の方が全部相続するときのデメリットの最たるものは二次相続、つまり財産を相続した配偶者の方が亡くなったときの相続税負担が増える可能性があるということ。
同じ世代のご夫婦ですとそれほど間をおかずに相続が発生してしまうこともあります。
そういった場合に、一次相続では配偶者の税額軽減が適用できて税負担がほとんどなかったのに、二次相続では配偶者がいませんので税額軽減が適用できず、相続人が一人減ることも相まって税負担がトータルで見ると増えるということです。
ザックリとしたイメージですが
- 一次相続:税負担ゼロ
- 二次相続:税負担1000
- 合計で税負担1000
- 一次相続:税負担300
- 二次相続:税負担300
- 合計で税負担600
ということもあり得るということです。
ただ、前段でも触れましたが配偶者の方があとどれくらいお元気で過ごせるか、というのは誰にもわからないことです。
相続財産のうちに不動産が占める割合が高い場合など相続税の支払いのための準備や不動産の売却に時間を要するので一次相続では配偶者が全部相続しておく、というのも現実問題としてはあり得ます。
まとめ
相続税や相続対策では見通せない要素も多いですが「何を優先するか」によって取るべき選択肢がかなり変わってきますので、シミュレーションをしつつご納得いただける、安心いただける選択肢を検討していただくのがよいでしょう。