国税庁から「NFTに関する税務上の取り扱いについて(FAQ)」が公表されています。(2023年1月13日付け)
これをもとにNFTの相続税、贈与税の取り扱いを確認しておきましょう。
NFTとは
NFTとはNon-Fundible Tokenの略で、代替不可能なトークンとも呼ばれるのですがこれだけだと何かよくわかりませんよね。
FAQの冒頭でも「ブロックチェーン上でデジタルデータに唯一の性質を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能を持つトークンをいいます」と記載がされています。
要は模倣ができないことをデジタルデータ上で担保していたり、取引履歴を詳細に追跡できるようなそういうものだ、というイメージでよいです。
例えば絵画があって、それが有名な作家のモノであるかどうかを判別するのは昔の絵画だと専門家が出て来て真贋判定をします。
それが本物かどうかを人間の目と経験と知識とで総合的に判断するのですが、NFTアートですと元々そういう真贋性が担保されているので、誰が見てもアーティストXの作品だ、ということが分かります。
そういう機能をブロックチェーンという新しい仕組みで付与している、ということ。
NFTはアートに限らなくて例えば最近だとアーティストのライブチケットをNFTとして発行して取り扱っていたりします。
人気アーティストのライブチケットは転売や譲渡の問題に頭を悩ましている、対策を講じていることが多いです。
人気があってチケットの希少価値が高ければ高いほど争奪戦になります。
そういうチケットをNFTにすると偽物が出回らないということの安全性も確保され、どういうルートで人手に渡ったかの記録がされます。
このようなNFTが日常生活にも入ってきていることを考えると税務上の取り扱いも気にしておきたいところです。
今回は相続税・贈与税の取り扱いについて見てみます。
NFTの相続税、贈与税の取り扱い
FAQの答えの部分をまずは見てみましょう。
個人から経済的価値のあるNFTを贈与又は相続若しくは遺贈により取得した場合には、その内容や性質、取引実態等を勘案し、その価値を個別に評価した上で、贈与税又は相続税が課されます。
NFTに関する税務上の取り扱いについて(FAQ)
と記載されています。
経済的価値があるものを相続や贈与すると税金がかかりますよ、ということです。
では経済的価値はどのようにして把握するのか。
一般的な相続財産ですと財産評価基本通達という評価額計算のルールに基づいて計算をしていきます。
このルールにNFTの取り扱いがあるかというと現状では評価方法がないので評価通達5(評価方法の定めのない財産評価)に基づいて、評価通達に定める評価方法に準じて評価してください、ということになります。
例えばですが書画骨董、美術品などの評価方法に準じて、売買実例価額や精通者意見価格等を参考にして評価できる、とFAQに記載があります。
売買実例価額は実際に売買されている価額をいい、精通者意見価格は専門家による鑑定評価額をいいます。
例えば絵画や茶碗、陶器などは精通者意見価格を採用することが多いです。
また課税時期において市場取引価格が存在するNFTについてはその市場取引価格により評価して差し支えない、という記載もあります。
市場価格があるNFTの場合にはそれを元に評価するのがもっとも簡潔です。
まとめ
評価についてはこのようなFAQが公表されたことでまずはどういう取り扱いになるかが確認できました。
これについては問題ないかと思いますがケアしておきたいのは仮想通貨やNFTを所有していることを親族が知らないと換金などもできません。
このようないわゆるデジタルデータのみで管理されている財産について、どのように相続してもらうのか、所有していることを知らせるのか、処分の仕方なども整理して記録し万が一の時に引き継げるような手当をしておくことが大事です。
残高証明書が取得出来たり登記簿や名寄帳で確認できる種類の財産ではないので、余計に財産の漏れがないようにしておきたいところです。