相続税申告や対策において生命保険についてはお話を伺って、税務上の取り扱いをより丁寧にお伝えするようにしています。
税務上の取り扱いと相続人の方が考える取扱いで違いがあったり勘違いをしておられることがありますので注意が必要だからです。
保険契約に関する権利 入院保険等の給付
亡くなった方が保険料を支払っている場合には誰に保険がかかっているかがとても重要なポイントになってきます。
亡くなった方が自分に死亡保険をかけているのはオーソドックスな内容です。
これがクロスすると少しややこしいことになります。
例えば亡くなった方が保険料を支払っていて配偶者に保険がかかっている場合はどうでしょうか。
亡くなったのは配偶者ではないため死亡保険金の支払いはないです。これを保険事故が発生していないと表現するそうです。
保険がかかっている人が亡くなっていないので保険金が支払われないのは確かにそうでしょう。
では相続財産かどうかですが、こちらは生命保険契約に関する権利といって相続財産となります。
さらに遺産分割の対象となるのですが、イメージとしては亡くなった方が保険料を保険会社に預けていたというのが一番ぴったりくるでしょう。
預けていた状態なので保険金はまだ支払われていないけれど何処かのタイミングで保険金が支払われるはずです、その保険が死亡保険金でも年金保険でも。
保険金が支払われていないので財産として認識していないことがあるので注意が必要です。
また亡くなる前に病院に入院していたというかたも多いですがその際に受け取れる入院給付金や入院や治療に伴う保険金はどうでしょうか?
ご本人が生前に受け取れるものを受け取らずに亡くなっている場合には相続財産になり得ますし、ご本人ではなく相続人の方が受け取る契約になっている場合には相続財産から外れます。
保険の契約内容によるので注意してチェックしておきましょう。明細等を見てわからなければ保険会社に確認するようにしています。
遺産分けの対象
死亡保険金を受け取った相続人の方がいて、遺産分割協議でその死亡保険金を遺産分けの対象にしようと考えている方がときどきいらっしゃいます。
感覚としては相続財産だろうから分けようと考えたくなるのもわかります。
ただ死亡保険金については受け取った人の財産ということになっていて分ける対象ではないことに注意が必要です。
じゃあなんで相続税がかかるんだと言われると死亡保険金はみなし相続財産という位置づけになっていて相続財産と「みなす」とされています。
なので分ける対象じゃないけど相続税の課税対象になりうるということ。
なりうるというのは後段でお伝えする死亡保険金の非課税があるので、それを超えて死亡保険金を受け取っていると相続税がかかるからです。
では死亡保険金を遺産分けの対象として一部または全部をほかの相続人に分けたとなると代償分割または贈与とされる可能性があります。
税務上の取り扱いが異なることがある、ということは相続対策で保険加入をする際にはアタマの片隅に置いておいた方がいいでしょう。
法定相続人の非課税
死亡保険金については相続税の非課税枠が設定されています。法定相続人の人数×500万円です。
この非課税枠ですがそれぞれの法定相続人にたいして500万円の枠がある、と考えている方がいらっしゃいますが少し違います。
法定相続人が2人であればその相続について全体で1,000万円の非課税の枠があるということです。
つまり子Aと子Bが死亡保険金を1,000万円とゼロだった場合には子Aが1,000万円を受け取っていても全体で1,000万円の枠なので子Aが受け取った死亡保険金は相続税がかかりません。
では全体で超えている場合にはそれぞれ500万円の枠かというとそうではなく受け取った死亡保険金の割合で非課税の枠を分けます。
子A1,000万円 子B500万円 それぞれ死亡保険金を受け取った場合は
子A:1,000万円(非課税枠)×1,000万円/1,500万円
子B:1,000万円(非課税枠)×500万円/1,500万円
とそれぞれ非課税枠を分ける計算です。
法定相続人ではないかたが死亡保険金を受け取っている場合には非課税枠がそもそもつかえませんので、その方が受け取った死亡保険金は全額が相続税の課税対象となります。
まとめ
死亡保険の非課税枠は相続対策としては有効ですが税務的なことを少し頭の片隅において検討してみましょう。
思っていたのと違った、ということがないようにしておきたいものです。相続が発生してしまうと後戻りすることは困難ですからお元気なうちに見直しておくのが安心です。