先週に税制改正大綱が発表されました。資産課税の部分では今後の相続税対策にあたって大きく影響しそうな部分がありますので整理しておきます。
税制改正大綱の資産税部分(精算課税贈与部分)
以下、税制改正大綱からの抜粋です。
1 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築
(1)相続時精算課税制度について、次の見直しを行う
① 相続時精算課税制度適用者が特定贈与者から贈与にり取得した財産にかかる其年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
② 相続時精算課税制度適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用する。
③ その他所要の措置を講ずる。
(2)相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等について、次の見直しを行う。
① 相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。
② その他所要の整備を行う。
これまでとこれから
これまでの相続時精算課税制度と生前贈与加算の内容を整理しておきます。
相続税精算課税制度
・一度選択すると撤回できない
・いわゆる暦年贈与の基礎控除110万円がなくなる
・相続時に贈与されたものをすべて足し戻して相続税を計算する
・贈与時の価額で足し戻す 滅失などは考慮しない
・相続時精算課税贈与の基礎控除は2,500万円
・相続時精算課税贈与の税率は20%
生前贈与加算
・相続又は遺贈で財産を取得した相続人等が対象
・相続開始から3年以内の贈与が加算の対象
というのがこれまでの内容です。
上記改正がなされると令和6年1月1日以降はどうなるかというと、
・相続時精算課税贈与に基礎控除110万円が併用できる
・110万円までの贈与については相続時の足し戻しの対象外となる
・贈与されてから亡くなるまでの間に土地建物が災害により被害を受けた場合はその分を考慮する
・生前贈与加算は亡くなってから7年が足し戻しの期間となる
という内容になることが予想されます。
いままでは相続時精算課税贈与は110万円の基礎控除がないというのがネックになっていたわけですがそれがなくなり、その部分については相続税の計算上も考慮しないことになります。
相続時精算課税贈与による金銭贈与を促すという意図が見えます。
一方で生前贈与加算については足し戻しの対象期間が7年に延長され、足し戻す財産の範囲については変わりません。
よって110万円以下の贈与については相続時精算課税贈与を選択する方が相続税計算上は有利になりそうです。
ただ、改正があっても変わらないこともあります。
精算課税贈与は撤回ができませんのでずっとそれを選択する必要があることや、生前贈与加算の対象者は相続又は遺贈で財産を取得した相続人等、という部分です。
実際の法律改正があるまではどのような着地になるかは分かりませんが概ねこの大綱の通りに進んでいくものと考えられます。
まとめ
生前贈与をいかにコントロールしていくか、プランをしっかり練ることの重要性は増していますし、精算課税贈与選択後の将来に何が起こるか(さらなる税制改正やご自身や家族の状況の変化)も見通すことができないことのほうが多いのでリスクはあります。