相続税のご相談をいただいたときにお伝えすることを整理します。税金のご相談ではあるのですが、ゴールをそこに設定しない選択肢もあることをご提案しています。
気にすべきポイント2つ
相続税の試算をしてご提案をすることがありますが、気にしておきたいポイントが2つあります。
相続税の節税は以下の2つのポイントがクリアになってからでどうでしょうかというのが私の提案です。
納税できそうか
相続税が納税できる現預金が手元にあるかどうか、という点です。
相続税の納税は金銭一時納付といって、金銭で一括で期限までに納付することが原則です。
金銭で一時に納付できない場合には、他にも方法がありますが金銭で納付することよりも何段階もハードルが高いです。
他の方法(延納や物納)を選択することよりも金銭で納付できるように準備しておくことの方が選択肢としては有望です。
株や不動産の割合が高い場合には、これらを相続後に想定している価額で売却できるかは誰にもわかりません。
上場株式の場合には、相続人の方が証券口座を開いてそこに株式を移し、売却するという手続きが必要で、少なくとも2、3ヶ月の時間を要することが考えられます。
不動産はもっと処分がしづらく、売りたいと思ったときにすぐには売れないものです。
納税のことをまずは考えてみましょう。もし納税ができない財産構成内容であればそこをまず整理していくことをおすすめしています。
分け方は決まっているか
相続税を計算する際には「誰がどの財産を相続するか」で相続税が大きく変わることがあります。
特に今住んでいる家を誰が相続するか、また事業をしている場合にはその事業ごと引き継ぐ人がいるか、こういう部分で大きく変わります。
これらの特例のことを小規模宅地等の特例といって、不動産を引き継ぐ人の状況に大きく左右されます。
これらを考慮せずに相続財産を決めていただくことももちろんできますが、この特例を適用できると全体の相続税が軽減されます。
全体の相続税が軽減されるということは、その小規模宅地の特例を適用する不動産を取得する相続人以外の相続人の相続税額にも影響するということです。
この辺りをどうするかを考えるためには遺産の分け方をどうるすか、という点が大事になってくるというわけです。
また、相続税の試算や対策においては二次相続のお話をさせていただきますが、どこまで気にかけるかもポイントです。
相続税申告や対策では配偶者が相続する財産が少ないと二次相続、つまり亡くなった方の配偶者が亡くなった時の相続において2回のトータルでの相続税が有利になります。
一次相続で配偶者の方の相続割合が大きいと配偶者の税額軽減の特例でその一次相続の税額は低く抑えられるけれど、二次相続では配偶者の税額軽減が使えないのでトータルで見ると、という話です。
そう言っても配偶者の方にもその後の生活もありますし、比較的お若いとまだまだ先が長い分、何が起こるかはわかりません。
そう言ったときに目先の相続税だけに囚われてしまうと後で後悔することも起きかねず慎重に考えたい部分です。
分け方を考えるというのはどう分けると家族が納得して安心できるかなという視点でも考えていただければとご提案しています。
相続税をゴールにしない
税金のことは二の次というわけではありませんが、税金が最も有利になる財産の分け方とご家族の納得感は関係がないことも多いです。
相続でご家族の関係が崩れてしまい、仲が悪くなって疎遠になったり仲たがいをするケースというのも実際に見かけます。
こういった場合には遺産の分け方に不公平感を持っていることが多い印象で、税金が抑えられる方法を感情抜きにして選択してしまっていることもあります。
ご家族の関係にも軸足を置きつつ財産の分け方を考えてみて、そこで相続税が払えるのであればそれで構いません、という遺産分割の方針をおっしゃる方もいて、ご家族の数だけ答えがありこちらでそれをリードすることはできません。
遺産の分け方を考えるときに税金が払えない可能性があるとそれも大変です。
相続税のことも気にしつつ、けどゴールにせずにいったん考えてみることをおすすめしています。
まとめ
相続税対策、分け方を考えるときのポイントについて書いてみました。
ご家族のおカネに対する価値観や家族観などにおおきく左右されるところで正解はありません。
ただ揉めてしまうことになるとやはりおカネで解決できないことが出てきますので、税金のことも気にしつつ、でもまずはそこから離れて遺産の分け方を考えてみましょう。