こんにちは、京都の税理士ジンノです。
先日、国税庁から相続税申告の事績(件数などのこと)が発表されましたので少し読み解いてみます。
相続税申告事績の内容
先日、令和2年分の相続税の申告事績が国税庁から公表されました。中身を確認してみます。(※令和2年分は令和3年11月1日までに提出された申告書(修正申告書を除く)データに基づいて作成されています)
①被相続人(亡くなった方)1,372,755人
②相続税の申告書の提出にかかる被相続人数 120,372人 (外書 32,651人)
③課税割合(②/③) 8.8%
ここからわかるのは亡くなった方の人数に対して相続税申告書を提出した割合です。この相続税申告書は相続税の課税がなされているものとなっています。
課税割合のグラフは以下の通りです。
平成27年から課税割合が大きく増えていますがこのタイミングで相続税の基礎控除について大きな改正があった影響です。
その後は緩やかにですが増加傾向となっています。
あくまでこの課税割合8.8%は相続税申告書を提出して税金がかかった申告の割合です。
外書の記載を見ていただきたいのですがこの人数は申告書を提出したけれど税金がかからなかった、というケースの件数です。
これを足してみると相続税の申告書を提出した被相続人数は153,023人となり、亡くなったかたでの割合でみると153,023/1,372,755人=11.14%です。
亡くなった方が100人いらっしゃると11人が割合として相続税の申告書提出が必要だったと言えます。
では申告書をの提出が必要だったけど税金がゼロだった、外書のようなケースはどういうものがあるかご存じでしょうか。
申告は必要だけど税額ゼロとは
相続税を計算するうえではいくつかの特例があります。
例えば配偶者の税額軽減の特例は、配偶者は相続財産のうち法定相続分か1億6千万円までの相続であれば相続税が軽減されゼロ円になります。
1億6千万円までの相続財産で全部を相続しても相続税がかからないということです。
配偶者は伴侶が亡くなった後の生活もありますし、夫婦で築いた財産という側面もあるという社会的な配慮による特例とされています。
ただしこの特例の適用を受けるためには申告書を提出する必要があります。
また小規模宅地等の特例というものもありこちらは相続する土地について、居住用など一定の要件を満たしている場合に適用されます。
この特例を受ける際にも相続税の申告書を提出する必要がり、申告書の提出が特例適用の要件の一つです。
このように申告はしても結果的に相続税がかからなかったケースがそれなりにあるということです。ではこのようなケースの場合には相続税対策は必要になるでしょうか。
相続税対策がいるかどうか
例えば家族関係が良好で残された配偶者が全部を相続したらいいよ、というケースはどうでしょうか。
1億6千万円までなら相続税はかかりません。2次相続といって、その財産を相続した配偶者が亡くなった際の相続のことを見越して遺産分割をするケースももちろんあります。
ただご家族が円満な関係で、お金の心配をしてほしくないから全部相続でもいいと私は考えています。
税金のことがゴールではなく、安心して財産を引き継ぎ穏やかにその後も不自由なく暮らせる、お金の心配をしなくてもよい、というのはとても心やすらかなことではないでしょうか。
税理士という立場で相続人の方と接していますと2次相続のことをお伝えすることももちろん大事です、税金のことですし、後で知らなかった聞いてない、と言われると困ります。
でも現実的にはそのような財産の分け方(配偶者が全部相続)をして、次のことはゆっくり考える、もし不動産を売却することになってもそれでいい、というご家庭もたくさん見てきました。
何を相続のゴールにするかで全くプロセスが変わりますし、税金がかかってもそれはご家族のご意向を最大限尊重したからこそ。
相続税は財産の分け方に大きく左右されますしあくまえ分け方が決まったうえでの相続税の計算です。(前述の特例は財産の分け方が決まっていることも適用要件の一つです)
まとめ
年末年始でご家族で話し合う機会がもしあるなら選択肢として考えていただくのもよいのではないでしょうか。
相続税は相続の話ではあるのですが税金計算は副次的なものです。ご家族みなさんが心やすらかになれる財産の分け方を考えてみましょう。