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相続税対策で賃貸用不動産を建築・購入する効果とリスク

賃貸不動産

こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。

相続税対策で賃貸用建物を建てましょう、賃貸不動産を購入しましょうというお話をよく耳にすることがあります。

なぜ賃貸用の不動産を建てたり購入すると相続税対策になるか、その効果とリスクについて解説をします。

 

目次

貸家建付地という財産評価

ご自分の土地に建物を建てる、または土地付き不動産を購入してきてそれを賃貸用不動産として賃貸している場合には、貸している土地と建物については貸しているということで権利関係が発生します。

 

この部分を考慮するため、自分の土地に自分で建物を建ててそこに住んでいる場合と比べるとその部分が減額要素となります。

 

自分で所有して自分で使っている、住んでいる場合の土地のことを自用地(じようち)といいます。

自分が持っていて貸している土地のことは貸宅地(かしたくち)、自分が持っている土地に建物を建てて賃貸している場合の土地のことは貸家建付地(かしやたてつけち)といいます。

 

土地を貸している場合、建物を建てて貸している場合、それぞれ貸している状態ですので借りている人に権利があってその権利部分を財産評価(価格計算のこと)に反映されます。

 

自用地:5,000万円の場合で考えてみましょう。自分の所有する土地ですので自分で処分したり使う権利があります。

 

土地を貸している場合には借地権割合というものがあり土地の所有者は底地を、借りているほうは借地権をそれぞれ有することになります。借地権割合は路線価図や倍率表という財産評価のための公表資料に記載されているもので確認できます。

仮に借地権割合が60%だとしたら、自用地評価額×(1-60%)=貸宅地の評価額という計算式になります。

 

自用地が5,000万円であれば、5,000万円×(1-60%)=2,000万円という価格計算の結果です。

 

自分が所有する土地に自分で建物を建て、その建物を貸している場合も貸していることについては土地を貸している場合と同じく権利関係が発生すると考えますので、価格計算において考慮されます。

 

貸家建付地の計算方法は、自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)という計算式となります。

借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%と仮にすると、自用地評価額が5,000万円であれば以下のような価格計算です。

5,000万円×(1-60%×30%×100%)=5,000万円×(1-18%)=4,100万円

 

効果とリスク

以上のように土地や建物を貸している場合には、特殊な場合(親族間で対価ゼロで貸し借りなど)をのぞいて自分で所有して自分で使うよりも価格計算上は下がります。

 

上記の例で言うと

自用地:5,000万円 貸宅地:2,000万円 貸家建付地:4,100万円という違いになっています。貸家建付地の場合にはここに建物の評価額を加味することになります。

 

建物の部分は貸している状態、すなわち貸家の場合には借家権割合というものを考慮して価格計算をします。

 

仮に1億円で建物を建てる場合を考えてみましょう。

1億円で建てた建物は1億円でしょうと思われる方も多いかと思いますが相続税を計算するうえでの評価額計算では少し異なります。

 

相続税を計算する際には建物の評価額は固定資産税評価額を用いることになります。この固定資産税評価額は購入または建築費用のだいたい6割とされています。

つまり、1億円で建物を建てた場合には建った瞬間に1億円×60%=6,000万円ほどの評価額となってしまうということです。

 

建物について貸している場合には、建物の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)で計算をしますので上記の例で言うと

6,000万円×(1-30%×100%)=4,200万円という結果となります。

 

1億円で建てた建物が建った瞬間に6,000万円の相続税評価額となり、そこからさらに貸していることを考慮して4,200万円となりますので、1億円を現金で持っているよりも4,200円の建物の相続税評価額のほうが税金がかからない、という計算となるということです。

 

この効果を狙って相続税対策と称し、賃貸不動産を購入したり建築することをアピールする不動産業者は非常に多いです。

 

ただし、賃貸不動産をキャッシュで購入することができるぐらい現金があればいいですが、多くの場合はそこに借入がついてきますし、そうなるとローン返済との兼ね合いも出てきます。

 

また古くからの地主の方であれば賃貸不動産の経営について慣れているかもしれませんが、なそうでない場合には不慣れなことばかりで大変さを感じる可能性もあります。

 

なによりも賃貸不動産を建てたはいいけれど借り手が経常的にずっと安定するということは稀です。

そういったことを考慮していない相続税対策としての賃貸不動産購入、建築の提案を多く見かけますが10年後、20年後にどうなっているかは未知数の部分が非常に大きいです。

 

このあたりのリスクは相続税に対するインパクト、減少効果が高ければ高いほどリスクも比例して上昇します。

投資であることの理解

相続税対策でもあるのですが不動産投資でもあることを忘れないようにしておきたいです。

 

というのも借入があると相続人に引き継いでもらう必要もありますし、そもそも相続人のかたが借入に対してネガティブな感情を持っていると引き継いだ後にうまくいかない可能性もあります。

 

相続税対策である前に不動産投資なので本当にこれでよいか、一度踏みとどまって考えていただきたいと私はご相談をいただいたときにお伝えするようにしています。

 

業者さんが持ってくる見通しに甘いところはないか、修繕費や空室率の見込みが現実とかけ離れていないか、相続人の方の理解を得られているか。こういったことが相続税対策である前に確認が必要なことです。

 

かつては土地の値段が上がり続ける時代が長くありましたがいまは不動産は相続したくないというお話を実際に耳にすることもありますし、自分の代できっちりカタを付けてキャッシュだけで残したいと仰る方もいます。

 

ご自身の財産であることに変わりはないのですがご家族でどういう方向性にしたいかというすり合わせがもっとあってもよいかなと私は考えています。

 

まとめ

賃貸不動産を利用しての相続税対策は地主さんを中心に人気がありますが、結局借入金がたくさん残ってしまったケースを見聞きしていると本当にこれで良かったのかという疑問を抱かざるを得ません。

対策である前に投資であるという意識でその目の前の提案書をまずは眺めて確認してみてもよいのではないでしょうか。

 

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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