こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
減価償却と聞くと、漠然と「なんかお得」と考えるかたがいますが、何かがお得になっているわけではありません。
本当に必要な財産なら全く問題ありませんが、決算が近づいてきてとりあえず何かを買って節税をする、というのは全くお勧めしません。減価償却に関するよくある勘違いについて解説します。
減価償却は分割して経費にしているだけ
減価償却という仕組みをまずは大まかに解説しましょう。
何か事業に必要なものを購入したとします、ここではクルマで考えます。事業に必要なのでクルマを300万円で購入しました。
一括でおカネを支払ったとすると今時点でおカネがクルマになった、とも言えますね。
おカネは出ていきましたが今の時点では経費はゼロ円です。おカネがクルマになっただけだからです。
クルマを使って事業を行い、事業年度末になったときにどういう処理をするか。ここで出てくるのが減価償却です。
計算を簡単にするために1月~12月を事業年度とする会社で、1月1日にクルマを買ったとしましょう。
年末の時点で一年間フルでクルマを使ったわけです。法人税の計算をする上での耐用年数に基づいて減価償却を考えます。(会計上は何年で経費にしてもいいのですが、今回はややこしくなりますので割愛します)
今回は6年の定額法(決まった金額で減価償却する方法)で計算をしてみます。6年間で均等に300万円を経費にするということを意味します。
1年目~6年目まで50万円ずつ減価償却という工程を経ることで払ったおカネが経費になっていく、そんなイメージを持ってください。
もし減価償却のシステムがなければどうでしょうか?おカネを払ったタイミングで全額経費になったとしたら?
その状態と比べると減価償却は分割して経費にしているだけです。
おカネが出ていくタイミングで経費になっていないだけで、300万円が6年にわたって経費になるだけなのです。
なので何かがお得になっているわけではないですね?むしろキャッシュという点で見ると一気におカネが出ていくわけですから資金繰りは圧迫することになります。
減価償却の方法にはいくつかあって、一定額を経費にしていく定額法、一定率を乗じることで経費になる金額が少なくなっていく定率法、資産によっては特例で特別償却という方法もあります。
少額減価償却にも限度がある
中小企業者等が青色申告の承認を受けている場合、少額減価償却の適用を受けることができます。一つの資産について30万円未満であれば、上記で説明したような減価償却をする必要がなく、その価額について一度に経費にすることができます。
いわゆる30万円以下の資産については一括で経費になるというのはこの特例のためです。
ただし、この少額減価償却の特例についても限度があります。その限度は年間で300万円に達するまでという金額の制限です。
30万円という数字が独り歩きして年間300万円に達するまでという制限が見落とされがちです。
このように書くと年間300万円を超えて30万円の資産を購入した場合は減価償却できないのかと疑問に感じる方もいらっしゃるでしょうが、別の方法で減価償却することができます。
限度があるということは忘れないでおきましょう。
不必要な財産はいらない
決算対策でよく物を買って節税をしたいと考える方がいますが、本当に必要なものであれば購入していただければよいです。
この必要なものであれば、という点も忘れられがちで、とにかく資産を買えば節税になるんだ、と勘違いしている方もいます。
不必要な財産を購入して利益を押し下げてもそれは節税ではなく無駄遣いになってしまいます。
せっかくコツコツ積み上げた利益を不必要な財産を購入することで失ってしまっても良いでしょうか?
わたしはそうは考えていません。
決算対策で保険に加入したり不動産の購入を勧められる社長さんも多いかもしれませんが、そうやすやすとウマい話は転がっていません。
不必要なものを買って現預金が減ってしまうぐらいなら、税金を払ったほうがおカネが残ります。
税金はとにかく払いたくないけれど利益は出したい、事業は成長させたいというのは矛盾した内容です。
事業を大きく成長させて利益を継続的に生み出すためには、税金とは上手に付き合っていく必要があります。
まとめ
減価償却にまつわるお話を書きましたが、節税対策と呼ばれるものはキャッシュが流出する、利益を繰り延べているだけ、というものが多いです。
決算対策も必要に応じて講じていくべきですが、少なくともいま必要がないものを買う、ということで利益を損なわないように考えてみましょう。