こんにちは、京都の税理士ジンノです。
不動産を多く所有している地主さんから管理会社を活用できないか、というご相談がをいただくことがあります。
個人の所得を法人という箱を作ってそこに移すことで様々なメリットがありますが、注意点ももちろんあります。この記事では注意点を解説します。
株式の所有者を共有にしない
不動産の相続を考えるときには共有にしない、という大事なポイントがあります。
不動産を複数の相続人で共有(1/2ずつとか1/3ずつ持ち分がある状態)にしてしまうと、なにか親族間での問題があったときに不動産を処分できないなど様々な問題が発生してしまいます。
具体的には
・処分(売却等)のときに意見が分かれて処分できなくなる
・売却のときに値段で折り合いがつかず売却が困難になる
・管理者がひとりのときには家賃の支払い遅延等が発生する可能性がある
・さらに相続が進んで共有が細かくなるとますます話し合いが困難になる
・共有不動産の持ち分を勝手に売却される
などが考えられます。
親族間であってもちょっとしたきっかけで仲が悪くなることはありますし、共有状態だとやろうと思えば相手に嫌がらせしたり困らせてやることできてしまいます。
今もしそのような兆候が全くなく仲が良くても、将来のことは分かりませんので不動産は共有しないほうがいいと相続ではセオリーとしてお伝えすることが多いです。
これと同じことが資産管理会社の株式にも言えます。
オーソドックスな資産管理会社の形態として、個人が所有する賃貸不動産の建物を法人に買い取ってもらい、土地は個人が所有し続けるパターンがあります。
おカネの流れとしては
賃貸不動産の家賃は法人に、法人から個人に土地の使用料(地代)を支払います。
法人という箱を用意してそこに賃貸収入が会社に入るイメージです。
この仕組みの場合には、建物を持つ法人の株式を所有することで間接的に建物を持っているのと同じことになります。シンプルに考えると建物が会社の株式に代わっているだけです。
建物を会社に持たせている状態なので共有には見えませんが、株式を仮に相続人で共有することになると、株式を通じて建物を共有することを意味します。
よって、建物を共有しているのと同じ問題が起きかねず、結局のところ誰が何を相続するかで揉め事になりかねません。
共有を避けるための解決策は?
複数の不動産をお持ちの場合には誰に何を相続してもらうのか事前に決めてから管理会社を作るなどの対策を実行する必要があります。
例えばお子さん甲と乙がいて収益不動産AとBの2物件ある場合を考えてみると
・Aを甲乙で50%ずつ、Bも甲乙で50%ずつ相続
・Aは甲が100%相続、Bは乙が100%相続
・AとBの不動産をひとつの管理会社Xに移して、株式を甲と乙で50%ずつ取得
・AとBの不動産をそれぞれ別の管理会社XとYに移して、X株式を甲が100%、Y株式を乙が100%取得
などなどいろんなパターンが考えられます。
亡くなった後で遺産分割を考える方向にしてしまうとどうしても共有の可能性が浮上してきます。
Aは甲に、Bは乙に、評価額で差異が出そうならば現預金でその差を調整するのか、それぞれ遠方で賃貸業には疎遠だからいっそのこと売却して金銭で相続するのか。不動産として財産を遺さない方法もありますし、実際にその選択をする方もいらっしゃいます。
実家から離れて生活して久しく、相続人がみな持ち家があって実家は残念だけれども誰も使わないということも最近は増えてきたように思います。
また不動産賃貸業というのは簡単に見えるかもしれませんがそういうこともなく、それなりに勉強も必要ですし、色んな判断をするシーンももちろんあります。
賃貸不動産が相続財産に含まれる場合にはいろんなパターンがあり、どれが一番そのご家庭によい分け方か、というのはご家族の数だけ答えがあります。
それぞれに一長一短もありますし、相続人になるかたの意思もあるでしょう。
一方通行にならずにどんな形がよいかオーダーメイドで相続対策を検討していく必要があります。
まとめ
不動産管理会社を設立して株式を共有にしようと考える方は株式を通じて不動産を共有していることに他ならないことは理解しておくほうがいいでしょう。
結局のところ不動産を共有していることになりますし、会社の株式だから共有してもいいということはありません。
中小企業の相続で時折問題になるのは会社の株式の取り扱いであることを考えると、不動産管理会社の株式にも同じことが言えます。
事前に相談して方向性を考えてから対策の実行をしましょう。