京都の若ハゲ税理士ジンノです。
所得税に関する申告期限が3月16日から1ヵ月延長して4月16日になりましたが、相続に関する申告・納税についても個別に期限延長できますというアナウンスが国税庁から出ています。
概要を確認してみましょう。
新型コロナウィルスによる特別措置
国税庁から「相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続に関するFAQ」というものが発表されています。
これは新型コロナウィルスの影響により申告期限までに申告等が困難な場合においては、個別に期限延長を認めますという措置になっています。
概要をお伝えすると
- どのような場合が期限延長の対象になっているか
- 期限延長の場合の期限はいつか
- どんな手続きが期限延長の対象か
- 個別延長する際の手続きの仕方は
という点が公表されています。解説していきます。
①どのような場合が期限延長の対象か
新型コロナウィルスに感染している場合はもとより、体調不良であったり、在宅勤務が要請されている自治体にお住いの場合、また感染拡大により外出を控えている場合の相続人等が該当します。
相続人等としているのは、相続人と受遺者(遺言で財産を取得する人)を想定していると考えられます。
上記のような理由以外であっても感染症の影響を受けて申告期限までに申告及び納付が困難な場合には個別に期限延長が認められます、という記載があり柔軟な対応となっています。
ここでの注意点としては、個別申請により申告期限等が延長されるのは申請を行った方のみであって、申請していないほかの相続人等の申告期限は延長されないということです。
一部の相続人のみ申請をする場合と相続人等について全員について申請する場合では、申請の記載方法が異なりますのでこの点は注意が必要です。
②期限延長の場合の期限はいつか
具体的には「申告・納付ができないやむを得ない理由がやんだ日から2ヵ月以内の日を指定して申告・納付期限が延長される」ことになります。
ついては、相続税の申告書等を作成・提出することが可能となった時点で申告を行うように公表文書には記載があります。
感染拡大等の見通しが全く立たないので、出せるようになったら出してください、ということです。
ここでの注意点は、個別に期限延長の申請をした場合には、申告書の提出日が納付の期限になるということです。
仮に3月31日が本来の申告期限の場合は、3月31日までに申告書の提出と納税を完了する必要があります。
これと同じく個別に期限延長して仮に4月21日に申告書を提出する場合には、その申告にかかる納税の期限は4月21日までとなります。
上記の場合において4月22日に納税をすると申告期限に納付をしていないことになり、不納付の状態になってしまいます。ペナルティ(延滞税)が課せられる可能性があります。
よって、個別に期限延長する場合には申告書提出のめどが付いたら先に納税をしておくほうが安心です。
③どんな手続きが期限延長の対象か
相続税にかかる各種申請や届け出など、申告以外の手続きについても新型コロナウィルスの影響により提出が困難な場合にはその対象となります。
④個別延長の申請をする際のやり方
こちらの申請のやり方ですが柔軟に対応していて、別途申請書等を提出する必要はありません。
具体的には申告書の余白(記載例では申告書上部)に「新型コロナウィルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を書いておけばよいとされています。
以下こんな風に書いておけば問題ありません。
相続人等の一部について個別延長する際には記載方法が異なりますので、その際には公表されている資料において記載例を十分に確認してください。
「相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続に関するFAQ」
相続手続きや遺産分割は人が接触してしまうもの
相続税の申告・納付について個別に期限延長された背景として、申告をするために行動をしてしまうと感染拡大をしてしまう可能性があるからです。
相続手続きにおいては金融機関や市役所に出向いて残高証明書の取得や、戸籍の収集をする必要があります。
まずこの時点で人との接触が避けずらい(郵便という手段もありますが)こととなります。
また申告納税においても税務署に出向いて、と考える方もいらっしゃるでしょう。
そうなると自分が知らないうちに感染を拡大している可能性も否定できず、税務署の職員が万が一感染してしまうと税務行政の円滑な遂行に支障をきたす恐れもあるわけです。
また、遺産分割協議がある場合には相続人全員により遺産の分割内容を決め合意する必要があります。
全員が必ずしも一か所に集まる必要はないとはいえ、とても大事な話ですので集まってみんなで顔突き合わして話をまとめたいと思うのは自然なことです。
そうなると人と人の接触が避けられず、また目に見えないウィルスの拡大を防ぐかを考えると、接触しないのが一番といえます。
さらに、海外に相続人がいて手続きができない、また外出自粛は海外のほうが強い規制をもって行われているため、帰国もままならない方がいらっしゃいます。
仮に遺産分割協議を海外に在住している相続人と行う際には、在住している外国の大使館または領事館においてサイン証明という形で証明が必要です。
海外に在住している場合には印鑑登録証明というのが取得できません。日本に住んでいる方のみ印鑑登録証明が可能です。判子文化ならではかもしれませんが。
まとめ
色んな事態が想定できるため今回の期限延長については個別に申請をしてくださいという形式になったと考えています。
もし該当する場合には感染拡大防止の観点からも、申告ができる状態になったときに適切な申請をして期限延長することを検討しましょう。