京都の税理士ジンノです。
相続対策の一環で、祖父母や両親から不動産の贈与を検討する場合があります。コツコツと贈与をすることは相続税対策のひとつとして有効ですし、可能であれば導入したいところです。
ただし、現預金の贈与と異なり、不動産の贈与の場合には税金としては贈与税だけを支払うわけではないので注意が必要です。
不動産を贈与した時の税金
贈与税の計算は以下のように計算します。
(一年間(暦年)に贈与された財産の価額の合計-基礎控除額110万円)×贈与税率
簡略化するとこのようになります。(一般税率、特例税率、控除額の説明は省略しています)
いざ不動産を贈与する際にはもちろん贈与税の計算や想定を行いますが、不動産を贈与する際にはほかに税金がかかることを見落としがちです。
見落としがちな税金は3種類あって、固定資産税、不動産取得税、登録免許税です。
固定資産税
固定資産税は、固定資産(この場合で言うと土地と建物)を所有していることに対して課税される地方税のひとつです。
こちらは不動産の贈与を受けた瞬間には課税されないので見落としがちです。
固定資産税は、その年の1月1日(賦課期日)時点での固定資産の所有者(登記で確認)に4月から始まる年度分が課税されます。
不動産の贈与を受けて登記を行っている場合、その贈与を受けた年の次の年の4月から5月ごろにその不動産の所有者宛に納税通知書が届きますので、それをもって納税をします。
例えば2019年に贈与で不動産を取得し登記が完了していると、2020年に固定資産税を納める必要があるということです。
贈与が完了したタイミングで支払うワケではなく、贈与後の不動産を所有していることについての課税です。
不動産取得税
その名の通り不動産を取得した際に課税される地方税のひとつです。
不動産を贈与で取得し登記を適正に行っていると概ね6か月ほどで納税通知書が送付されます。(不動産を取得したら不動産取得についての申告書の提出をしましょう)
贈与で取得した瞬間に納めるわけではないので、突然に納税通知書が来て驚く場合があります。
不動産業者等からの購入も取得に該当しますが、親族等からの贈与による取得も不動産取得税の課税対象です。
基本的には不動産を取得すると課税されるのですが、相続(包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈を含む)による取得には課税されません。
納める人は不動産を取得した人、つまり贈与の場合には贈与により取得した人です。
原則として税率は
土地:3%
家屋:4%
(令和3年3月31日まで)
となります。
「原則として」と記載したのは、住宅用土地や住宅については軽減措置があるからです。
いずれにしても不動産を贈与で取得すると不動産取得税が課税されます。
登録免許税
不動産を取得すると、この不動産は私のモノです、ということを登記簿謄本に登記をする必要があります。
登記をする際には登録免許税という不動産取得税と同じく、資産の移転について課される流通税のひとつです。
贈与による不動産の取得にかかる登録免許税は、土地、建物いずれも20/1000となります。
不動産の贈与はより慎重な判断が必要
現預金の贈与の場合は手続きは非常に簡便です。
贈与契約書を作成し、現預金を贈与し、贈与税の申告が必要であれば申告をする、という流れです。
一方の不動産の贈与は手続きが多くそして長期になります。
贈与契約書を作成
不動産の移転登記(登録免許税)
不動産取得についての申告(不動産取得税)
贈与税の申告(申告が必要であれば)
固定資産税の支払い
と手続きが増えて、なおかつスパンが長くなります。
その点だけでも注意が必要ですが、相続税対策として贈与を検討する際には、相続税と贈与税+アルファの税金の有利不利も確認しておく必要があります。
不動産の贈与をしたいという場合にはまず相続税の試算をし贈与税とプラスアルファの税の試算をしてから慎重な判断をしましょう。
まとめ
[box03 title=”本記事のまとめ”]- 不動産の贈与は贈与税だけに注意をすればよいわけではない
- いわゆる流通税(不動産取得税、登録免許税)がかかることを念頭に
- 贈与税以外の負担があるため慎重な判断が必要
贈与税だけに気を取られていると思わぬところで負担が生じることになりますので、慎重な判断と心づもりをしておきましょう。